［J１第13節］FC東京２－１川崎／５月12日／国立競技場

　2023年５月12日、Jリーグ30周年記念スペシャルマッチとして開催された多摩川クラシコでFC東京が川崎に２−１と勝利。後半途中からひとり少ない川崎に最後は押し込まれる展開になったが、粘り強く守り切って価値ある勝点３を手にした。

　勝因のひとつは、試合の入り方にあった。どこかフワッとプレーし始めた川崎に対し、FC東京はキックオフ直後からエンジン全開。球際のところで激しくトライし、セカンドボールに素早く反応と、いわゆる“基本的な部分”で川崎を上回ってゲームの流れを引き寄せた。

　守備の局面でとりわけ効いていたのが、中盤３人のチェイシングだった。小泉と安部の両インサイドハーフ、アンカーの東が良い距離感を保ちつつ、相手のパスコースをかなり限定。そうして川崎の攻撃をスローダウンさせ、敵の中途半端なパスをカットして、時間をかけずに前へボールを運ぶ意識が徹底されていたのが試合序盤のFC東京だった。

　主導権を握ったうえで早い時間帯に先制点を奪えたのは大きかった。徳元の先制点のきっかけとなったのが、長友の右サイドからのクロス。比較的アバウトなボールを前線に放り込むと、左サイドに流れたボールに反応した徳元がそのままドリブルで持ち込んで右足シュートで叩き込むのだが、そのアバウトなボールこそシーズン序盤のFC東京に足りなかったもの。相手とフィフティフィフティのパスを危険な位置に蹴り込む重要性を示すシーンでもあった。
 

　これで勢いに乗ったFC東京は攻撃の手を緩めず、果敢に２点目を狙いに行く。このアグレッシブな姿勢が結果的に最大の勝因に映った。リードしたからといって相手の様子を見るのではなく、ここで仕留めるというスタンスが安部のゴールを呼び込んだとも言える。明らかに浮き足立っていた川崎のリズムをさらに狂わせるべく、攻勢をかけた点が勝敗を分けたと言っても過言ではない。

　事実、試合後、川崎の鬼木監督はこう反省していた。

「単純に反応が悪かった。セカンドボールへの反応が悪く、そこで相手に上回れてしまった。そこで何をすべきか、自分たちで当然考えないといけないところがある。そこに対して指示を出していたが、今日の雰囲気だとなかなか届かない。あとは、やっぱり失点のところ。なんだかんだ、悪い流れでも我慢すればまた流れを持って来られる」

　自分たちの時間帯にしっかりゴールを奪う。サッカーの鉄則ともいうべきところを実践したFC東京の勝利は妥当だっただろう。前半途中から川崎に主導権を握られる時間帯もあったが、90分通して試合を支配できるケースなど稀だ。今回のクラシコに限れば、畳み掛けるタイミングで、それを迷わずやってのけたFC東京のスタンスは見事のひと言である。

「（前節まで）チームとしてどうすべきか迷っているなかで、今日、皆で腹を括ってやるべきことに集中できた。それで勝点を獲れたのは大きいです」（森重）

　腹を括る。この日のFC東京には、もう負けられないという、確かな覚悟を感じた。

取材・文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集長）

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