元日本代表MFの鈴木啓太氏が１月13日に自身のYouTubeチャンネルを更新。昨年限りで現役を引退した元北朝鮮代表FWの鄭大世氏をゲストに招き、学生時代の話を聞いた。

　愛知県名古屋市で生まれ育った鄭氏は、「朝鮮学校だから生徒の人数が少ない」環境で、サッカー部しかなかったために入部。足が速く、小学３、４年生年代の頃のポジションは右のサイドハーフ。当時のレベルは低く、中級部の頃も県大会に出られなかったという。

　その後、進学した愛知朝鮮高級学校では、愛知県で２回ベスト４に進出。ただ、鈴木氏に県選抜に選ばれていたかを問われると、「存在すら知らなかった」と回答する。

　当時は、プロへの思いも「想像はしていたけど、ふんわりとしていた」という。学校のグラウンドが狭く、周囲にレベルの高い選手がいない環境で、「指標が無いから現実味が全くなかった」と振り返った。

　卒業後は、朝鮮大学校へ。「プロへの手掛かりもない。手掛かりを探しに大学に行ったという感じ」という状況。サッカー部の監督を在日朝鮮人で初めて北朝鮮代表で活躍した金光浩氏が務めていたため、全国から有力選手が集まったが、当時の所属は東京都３部リーグだった。

　鄭氏は、対戦相手が試合後にタバコを吸っていたと明かし、「いばらの道。プロになれる可能性はゼロに等しい。奇跡と奇跡の連鎖でプロになった」と語った。
 

　そのなかでも、社会人チームとの試合でのハットトリックがきっかけで、代理人の田邊伸明氏に見出されて、Jリーグのチームへの紹介を受けられるようになった。初の練習参加は、横浜F・マリノスだった。

　鈴木氏にどうだったかを問われると、「全く歯が立たなくて、何をやっているかわからない、下手過ぎて」と回想。周囲のパスのうまさからGKと１対１の絶好機が訪れたが、後ろから来たDFに身体を当てたれると、吹っ飛ばされてしまったという。

　この経験から「10キロ増やそう」と筋トレに励み身体を強化。後に持ち味となったポストプレーの基礎となるフィジカルを整えた。結局、横浜には契約してもらえなかったが、当時の岡田武史監督から「オフ・ザ・ボールの動きが悪すぎる」と指摘を受け、「自分の課題が見えたから良かった」と糧にした。

　その後、当時J２の湘南ベルマーレへの練習参加で手ごたえをつかむと、川崎フロンターレでは練習試合でアピールに成功。この川崎でプロ入りを掴み取った。

　当時、契約書を見て「これがプロか…」と実感。寮で天井を見ながらガッツポーズをしたと振り返った。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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