［高校選手権２回戦］神村学園 3-2 山梨学院／12月３１日（土）／等々力陸上競技場

　高校卒業後にボルシアMG（ドイツ）へ加入する高校No1ストライカーの一撃に会場がどよめいた。

　２回戦の山梨学院戦、０―１から試合を振り出しに戻した直後の前半38分だ。神村学園のFW福田師王（３年）が魅せた。盟友のMF大迫塁（３年／セレッソ大阪入団内定）がハーフウェーラインよりやや奥に構える福田に縦パスを通す。緩いボールだったが、身体を上手くぶつけて相手を弾き返し、身をねじりながら前を向いた。目の前には広大なスペース。福田は迷わずに前進し、40メートル超の距離をひとりで運んでGKとの１対１に持ち込む。冷静に相手のポジションを見て左足を振り抜くと、見事に決まってチームに貴重な逆転ゴールをもたらした。

　相手を抑え込むパワー、体勢を崩されても持ち直して前に進むボディバランス、そして冷静にゴールを決める決定力。すべてが異次元で、高校年代ではなかなかお目にかかれないゴールだった。

　最終的には後半27分にPKで追いつかれ、終了間際にFW西丸道人（２年）が勝ち越し点を奪っての勝利。薄氷を踏みながらの２回戦突破となったが、福田が示した存在感は圧倒的だった。

「良いターンができたので、あと確認してシュートまで持っていけた。一瞬でどっちに（ターンすれば）スペースが空くか分かって、前に出ていけましたね」

　試合後、福田は自らのゴールを冷静に振り返った一方で、自身の出来に関しては不満そうな表情を見せた。「チャンスの割にはゴールを決められなくて悔しい」。そう言って自分を戒めた注目ストライカーのプレーを見ると、確かにこの試合はいくつもあった決定機で仕留められないシーンが目立った。

　前半19分にはゴール前で２度チャンスが巡ってきたが、いずれも右足で放ったシュートはゴールに結びつかない。後半45分にもターンから右足で狙ったものの、またしても決められなかった。80分間を通じて放ったシュートは７本。１本しかネットを揺らせていない状況に、自分の未熟さを痛感させられるゲームともなった。

　今までもそうだった。１点決めて勝利を挙げても納得しない。「悔しい」という言葉を何度も口にしてきたのもさらなる成長のためだ。

　常に矢印を向け、ゴールが奪えなかった理由を考える。課題が出れば、新たな取り組みにチャレンジし、成長の糧にしていく。１年生の頃と比べて体重が16キロ増え、身体の強さが強化されたり、跳躍力やスピードが増したのも日々の努力の賜物だ。
 

　そうした姿勢に後輩たちも影響を受け、FW名和田我空（１年）や左SB吉永夢希（２年）といったU-16日本代表コンビから慕われている。それも、ストイックに取り組む姿勢を持っているからこそだろう。

　勝利しても満足しない。１点でも多くゴールを奪わないと納得できないからだ。そうしたストライカーとしての矜持が福田を右肩上がりで成長させてきた。

　はたして、日大藤沢との３回戦ではどんなプレーを見せ、ひとつでも多くのゴールを上げて勝利に貢献できるか。体調不良で有村圭一郎監督が不在となるなか、神村学園史上初の日本一を成し遂げるためには、さらなる爆発が求められる。

「もっと自分が点を決めれば、守備陣を楽にできる。次の試合は（今まで以上に）得点にこだわってシュートを撃つ」とは福田の言葉。貪欲な姿勢でゴールを狙い続けるストライカーのプレーから、次戦も目が離せない。

取材・文●松尾祐希（フリーライター）

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