東海選抜との初戦を０-３と落とした日本高校選抜は、第2戦の強豪・関東選抜Bを相手に初戦とは見違えるようなサッカーを展開した。この試合で日本高校選抜はこれまでの４-４-２ではなく、３-４-２-１システムを採用。この布陣がガッチリとハマり、立ち上がりから一進一退の攻防を展開。31分にセットプレーから先制を許すが、44分に左からのクロスをFW松永颯汰が押し込んで同点に追いつくと、後半も対等に渡り合って１-１のドロー決着に終わった。

　この好ゲームの主役となったのが日本高校選抜の3バックの中央に君臨した薬師田澪だ。本職はボランチだが、183cmの高さを誇り、守備センスや戦術理解度が高く、CBとしての能力は十分に兼ね備えている。だが、それを差し引いても急造3バックの中央で、格上の相手にも全く臆することなく堂々たるプレーを見せたのには正直驚いた。

「（チェイス）アンリがU-21日本代表から帰って来たばかりですし、馬場拓己も少し怪我をしているのもあって、3バックをやろうとやりたいと言われて、真ん中で起用されることになりました。『真ん中でコントロールしてチームを盛り上げてほしい』と仲村浩二監督にも言われていたので、それをやるだけでした。全然違和感なくプレーできました」
 

　試合後、こう淡々と語ったように、立ち上がりからずっとこのポジション、フォーメーションでやって来たかのように身振り手振りで周りをコントロールしながら、相手のアタッカー陣に対して球際で負けることはなく、空中戦でも対等に渡り合った。さらに大津高の先輩である関東選抜Bの1トップ・樋口堅大とのマッチアップは凄まじく、高度な駆け引きを仕掛け合いながら白熱の頭脳戦を展開していた。

　中でも特筆すべきだったのがラインコントロールの妙で、FW樋口、MF浅倉廉、MF岩本翔などのプロ注目のタレントが揃う相手に対して、ラインを下げることなく、90分間強気のライン設定をやり抜いたことだ。スピード、テクニック、パワーを揃える相手アタッカー陣の特徴を見極めて、中盤の4枚と最終ラインの3枚が連動をしてプレスを仕掛けては、相手が裏のスペースを狙って来たら、「全て自分がカバーするつもりでいた」と読みと足のスピードを生かしたカバーリングで決定機を作らせず。関東選抜Bは前半に３本、後半は２本のシュートしか打たせてもらえなかった。

　得意のフィード面でも後半に途中出場のMF藤森颯太の動きを逃さず、ディフェンスラインとGKの間に絶妙なロングパスを通し、決定機を作り出すなど、攻守両面で存在感を放ち続けた彼は、間違いなくこの試合のMVPだった。

「仲村監督からも『カバーリングは薬師田が全て行け』と言われていましたし、ファーストコンタクトもカバーリングもフィードも全て出来たと思います」

　ボランチでもCBでもハイクオリティなプレーを表現できる。格上を相手に大きな可能性を示した彼は、視察に来たスカウトの目にも大きなインパクトを残したことは間違いない。この大会後、薬師田は関東１部リーグの名門・法政大に進学する。大学での4年間で、このスケールの大きな頭脳派プレーヤーがどのような成長を見せてくれるのか楽しみでならない。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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