浦和レッズと今季限りでの契約満了を発表した槙野智章が11月17日、複数メディアに対してオンラインでの囲み会見に対応した。

　１時間以上に渡る取材のなかで槙野が繰り返したのは、「浦和が大好きなんです」だという“レッズ愛”だった。

　クラブから契約満了の通達を受けたのは11月５日。それから10日以上が経つが、いまだに現実を受け入れられていないという。

「あまり整理はついていないですね。時間が経ちましたけど、今になっても答が導き出せていないです。個人的に通達された時には『まさか自分が……』という想いは正直ありました。11月５日に受けて、今日は17日ですけど、毎日泣いています」

　会見でも度々涙ぐみながら、10年に渡る浦和での生活を振り返り、言葉を紡いでいった。

「（涙が出るのは）このクラブが好きだからです。これまでやっぱり長くレジェンドの方たちがいますし、僕は他所から来ましたけど、たかが10年かもしれないけど、僕にとってこの10年ってすごく濃かったんですよね。大好きなクラブにずっと居たかったし、このクラブで引退したかったなと」
 

　広島県生まれでサンフレッチェ育ちの槙野だが、浦和は特別なクラブだったという。

　広島時代の恩師でもあったペトロヴィッチ監督が就任した2012年に１年間の期限付きで浦和に加入すると、同年のピッチ内外での活躍によって完全移籍に移行。浦和では2017年のアジア・チャンピオンズリーグ制覇をはじめ、J１リーグ1stステージ （2015年）、J１リーグ2ndステージ （2016年）、ルヴァンカップ（2016年）、天皇杯（2018年）などのタイトルを獲得。個人としてもJリーグベストイレブンに２度（2015、16年）輝いている。

　在籍10年間で得られたものは「自信」だ。

「こう見えて自信があまりなくて。自分がやることによって自信を得てきました。周りに見せて、人前に立って発言するということは、それだけのものをやってこなきゃいけないし、見せてこなきゃいけない。その意味では、この10年間は、フィジカル的にもメンタル的にもすごく自信をつけさせてもらったのかなと思います」

　来季は別のチームでプレーすることになる。そんな現実も今は受け入れられない様子で「本音を言えば、やっぱり試合をしたくないですよ。埼スタで違うユニホームを着てプレーする姿を見せなきゃいけないんですけど、浦和を相手に違うユニホームを着てプレーするのは、今は想像できないです。それくらい難しい状況です」と素直な気持ちも吐露。

　それでも、ゆくゆくは「監督になって戻ってきたい」というビジョンも明かす姿や、残りのシーズンについて訊かれた時の気丈な振舞いには、情熱を感じさせた。

「昔と変わらず、ひたむきに熱いプレーを見せたいですね。多分いろんな人が今回のリリースを受けて、僕に対する思いを持っているし、いろんな意味で注目していると思うので、それを撥ね返すくらい元気なところを見せなきゃいけないかなと思います。僕はお祭り男なのでね、盛り上げなきゃいけないし、持っている男だと思うので、ゴールを狙いますよ」

　34歳のDFはまた前を向いてファン・サポーターを勇気づけてくれるだろう。浦和でのラストダンスに期待だ。

構成●サッカーダイジェスト編集部