今年で29回目を迎えるルヴァンカップ（旧ナビスコカップ含む）は、回を重ねるごとに若手選手の登竜門として、その位置づけを強めてきた。

　実際、リーグ戦出場より先に、ルヴァンカップで公式戦デビューを果たす20歳前後の選手は少なくない。大会の個人表彰として、MVPと並んでニューヒーロー賞が設けられていることも象徴的だ。

　だが、近年は海外移籍の若年齢化が進み、登竜門をくぐり抜ける前に日本を離れてしまう。そんなケースも増えてきた。歴代のニューヒーロー賞受賞者の顔ぶれを見ても（対象年齢が現在とは異なっていた時代があるため、一概に比較はできないが）、かつては名波浩、高原直泰、長谷部誠といった日本代表で長く活躍した選手がいた一方で、最近はやや小粒になった印象を受ける。

　ルヴァンカップで脚光を浴び、日本代表へとステップアップしていく。そんな選手は、確かに少なくなっているのかもしれない。

　しかし、かつてのルヴァンカップは、各クラブがいわば“自主的に”若手に出場機会を与える場として活用していたのに対し、現在は大会規定で21歳以下の選手の出場が義務づけられている。つまり、若手選手の登竜門としての位置づけは一層強まり、以前にも増して若手に広く門戸が開かれているわけである。

　だとすれば、かつてなら日の目を見ることのなかった才能が、今なら（少なくとも一度くらいは）掘り起こされる可能性が高い。

　海外移籍の若年齢化とともに、ルヴァンカップ出場選手の若年齢化も進むはず。ひいてはニューヒーロー賞も、むしろその名称にふさわしい意味を強めるようになるのではないだろうか。
 

　悪い言い方をすれば、それは若い選手を“持ち上げる”ことにもつながるのかもしれない。10代にして一瞬の輝きを放ち、その後はかなく消えてしまう早熟の天才が、ニューヒーロー賞に名を連ねる。「活躍したのは、あのときだけだったね」。そんな記憶とともに、過去の人として思い出される受賞者が出てきても不思議はない。

　だが、当時すでに日本代表にも選ばれ、ジェフ千葉のキャプテンを務めていた阿部勇樹（2005年受賞）のように、「今さら彼がニューヒーロー？」と違和感を覚えるような選手が選ばれるよりは、ずっと本来的な意味に近い。

　ニューヒーロー賞の受賞者が小粒になり、日本代表に選ばれていない――。そんな傾向が見て取れるのは、ブレイクの可能性を秘めた未完成の選手が選ばれているがゆえ、でもある。その後の成長に注目する楽しみは、むしろ増した――。ニューヒーロー賞の正しい愛で方である。

取材・文●浅田真樹（スポーツライター）

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