合計で１億3180万ユーロ（約171億3400万円）もの大金を注ぎ込み、ブラジル代表MFのフィリッペ・コウチーニョ（リバプールから）とコロンビア代表DFのジェリー・ミナ（パルメイラスから）を獲得した宿敵バルセロナとは対照的に、レアル・マドリーは１月の移籍マーケットで補強をしなかった。

　入団が確実視されていたアスレティック・ビルバオのGK、ケパ・アリサバラガの獲得も結局見送っている。

　１月初旬にはマドリードでメディカルチェックを実施し、あとは契約を結ぶだけという状況だったが、本人が昨秋に骨折した右足つま先の手術を拒んだことで一変。ジネディーヌ・ジダン監督は今冬の獲得を取りやめ、この23歳の逸材はA・ビルバオとの契約を更新した。

　マドリーが冬の移籍市場で補強しなかったのは、これで３年連続だ。それどころか、2010年代を通じても３人しか獲得していないのだ。

　まず１人目は、ジョゼ・モウリーニョ（現マンチェスター・U監督）政権１年目の11年１月に、マンチェスター・Cから半年の期限付きで加わったエマニュエル・アデバヨール（現イスタンブール・バシャクシェヒル）だ。

　長身のトーゴ代表ストライカーは、カリム・ベンゼマ、ゴンサロ・イグアイン（現ユベントス）に続くCFの３番手として、リーガ・エスパニョーラで14試合・５得点、チャンピオンズ・リーグで６試合・２得点とまずまずの働きを披露。シーズン後にはマンチェスター・Cからの買い取りも検討された。だが、結局クラブはそれを見送り、アデバヨールは半年でマドリードを去っている。

　12－13シーズンの冬の移籍市場でやって来たのが、GKのディエゴ・ロペス。マドリーのカンテラで育ったD・ロペスにとっては、６年半ぶりの古巣復帰だった。

　当初は故障離脱中だったイケル・カシージャス（現ポルト）の穴埋め要員と見られていたが、モウリーニョ監督はその絶対守護神が戦列に戻ってからもD・ロペスをスタメンで起用しつづけ、指揮官のその選択がメディアやファンの間で論争を巻き起こした。

　監督がカルロ・アンチェロッティに代わった翌13－14シーズンも、D・ロペスはカシージャスを差し置いてレギュラーを務めた。そして14年夏、カシージャスともどもクラブを去り、イタリアの名門ミランと契約。現在はスペインに戻ってエスパニョールでプレーしている。

　残るひとり、つまりマドリーが最後に獲得した冬の新戦力が、15年１月に加入したルーカス・シウバだ。ブラジル国内で評価を高めていた当時21歳のこのMFを、マドリーは将来性を見込んで1300万ユーロ（約17億円）で手に入れた。

　しかし、L・シウバはタレント揃いのマドリーで居場所を見つけられず、半年後にはレンタルで放出される。さらに16年９月には心臓疾患が発覚。現在もマドリーが保有権を持ってはいるが、チームに戻ってくる可能性はほぼなく、17年１月以降はレンタル契約で古巣のクルゼイロに籍を置いている。

　近年のマドリーは冬にかぎらず、夏の移籍マーケットでも最小限の動きにとどまっている。17年夏もダニ・セバジョス、テオ・エルナンデズといった、才能は折り紙付きもまだ未成熟の若手を獲得しただけだった。

　毎年のように市場を席巻したかつてのマドリーが懐かしく思えてならない。