【本田密着】変わる風向き。あとは「ゴール」という結果を

カテゴリ:ワールド

神尾光臣

2014年04月03日

不運があったとはいえ、決定的なチャンスを逃したために。

守備をこなしつつ、右サイドからゴール前に入り込む形ができつつある。それだけに、あとは“目に見える結果”が是が非でも欲しいところだ。 (C) Getty Images

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 セリエA31節のキエーボ戦、本田圭佑は攻守に渡って奔走しつづけ、カカに素晴らしいクロスを供給した。攻撃的MFにしてはボール奪取の回数も多く、90分トータルで見れば充実したパフォーマンスのはずだった。だが、各メディアの評点は及第点の「6」にとどまった。間違いなく、前半38分にマリオ・バロテッリからの決定的なラストパスを大きく吹かしてしまったシュートミスを差し引かれての評価だ。

 ただでさえサッカーというスポーツは点が入りにくく、ワンチャンスをきっちりモノにする決定的な仕事が攻撃的プレーヤーには求められる。守備に人数をかける傾向が強く、ロースコアになりがちなイタリアでは、攻撃を担う選手に対する評価は余計に厳しいものとなるのだ。バロテッリのラストパスはゴール前で弾み、ダイレクトで撃ち切ろうと思っていた本田の目の前で、合わせにくいハーフバウンドとなってしまった。不運があったとはいえ、決定的なチャンスを逃したそのために、厳しく評価されたのである。

 後半9分、FKからのヘディングシュートもGKミカエル・アガッツィに弾かれてしまった。
「(本田に訪れた)二度目のチャンスは、GKも良かったね。決まっていれば、精神的にもつかえが取れて、この日のプレーはもっと良くなっただろう。その意味では残念だ」
 クラレンス・セードルフ監督も、本田が逃したチャンスを惜しがっていた。

 卓越した個人技を駆使し、単独でシュートチャンスを作り出せるロビーニョも、ミラニスタの間では批判の対象となっている。それはひとえに、肝心のシュートを外す機会が多いからだ。小洒落たプレーをしながら、それを結果に結びつけられないでいると、イタリアでは「レッツィオーゾ(キザ)」というレッテルを貼られてしまうのである。

 もっともキエーボ戦での本田のプレー内容は、「レッツィオーゾ」とはほど遠かった。中盤を奔走してしっかりと守備をこなしながら、丁寧かつシンプルにボールを繋いでカウンターを演出する。前節のフィオレンティーナ戦に続いて実直なパフォーマンスを見せたことで、評点は6でも本田に対するメディアの評価自体は好意的に変わってきている。試合後の監督会見で、口火を切ったのは地元記者のこんな質問だった。
「本田やターラブトはよく中盤に下がってチームに貢献していたが、チーム全体として成長している実感はあるか?」
 私が取材に訪れた3月31日のリボルノ対インテル戦では、インテル番の記者から「なんか本田が良くなってきているじゃないか」という感想を聞いた。

 それだけに、セードルフ監督が言う通り、あとはゴールという結果が欲しいところだ。右サイドからゴール前に入り込む形はできつつある。キエーボ戦でもあれだけ深いポジションを取りながら、3回の決定機(一度はセットプレーだったが)に絡めた事実は評価に値するだろう。攻撃的MFとして必要とされる“目に見える結果”が、その意味でも求められる。

――◆――◆――

 2014年1月、本田圭佑が新たなチャレンジを開始した。CSKAモスクワから、世界屈指の
超名門クラブ、ACミランへ――。

「心の中の『リトル本田』に聞いた」との名言とともに、名門クラブの背番号10番を背負った本田。そのロッソネーロ(ミランの愛称で赤と黒の意)の日々を、現地在住のライター、神尾光臣氏が追う。
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