自分で社会を知る、サッカーを知ることが大事になってくる
「前へ、コーナーフラックに蹴ってくれ」
これは少年少女に対するサッカーの躾の言葉として適切なのか?
それは「君は技術が低いからそんなプレーはいらない」、だから「前へ…」と、子どもの可能性を省いてしまうサッカーの躾がまだ多いのではないか?
レストランに行くと、大きな声で叫び出したり、泣き出したりする子どもと、静かに座って食べる子どもがいるように、大人の躾で子どもは変わる。同じことが選手にも言える。ただ、それでも大人になってどんな人間になるのかは分からない。これもまた選手も同じだ。
躾だけが出来ても、言われたことだけ守れてもダメなのであり、自分で社会を知る、サッカーを知ることが大事になってくるのである。
ウチは個人を教えるので負けても良い――。
ウチは何をしても何を使っても勝てば良い――。
二つの言い分は正反対に思うが、実は同じことを教えているのであろう。技術を教えること、勝ち方をそれぞれ押し付けていて、サッカーを教えていない。
僕は子どもの頃、この両面にアプローチした指導を受けて育ったサッカー少年である。
だから子どもの頃、カズより技術の高い、巧い、カズより速い、カズより身体の強い選手は当時、何人もいた。
ただ54歳で現役を続けられる選手は彼しかいない。
それは子どもの頃からのサッカーでの躾から始まり、彼がいろんな人から学び、吸収し、今でも全てを総合してプロのサッカー選手であることを知っているから続けられるのであろう。
世界で通用する選手を育てるには、ひとつの要素を強くアプローチするだけでは限界がある。生まれ持った能力、才能も必要だ。そんな中で「気持ち」があれば可能性は生まれる。やる気がなければ話にならない。
だからまずは、気持ちの強い、やる気のある選手であることが大前提になる。その気持ち、胸を指して心の部分はサッカーにおける脳であり、認知能力というインテリジェンスの根源になる。
そしてその「サッカー」に、なんらかの問題があるとすれば、指導者の関わり方がより大事になるのである。
今の時代、あのブラジルでさえ、僕が理想としていたブラジルではない……。世界一のサッカー王国のサッカーではない。
日本は育成の話になると、他所の真似をしたがる傾向にある。スペインになったり、ドイツになったり、フランスになったり、南米、東欧……。いろんな国から学ぶのは良いことだが、日本人の持つストロングを生かしたサッカー育成論が必要だ。
もうブラジルでさえ、鵜呑みに信じてはいけない時代になっているのだから……。
このコラムを書きながら、果たして自分の書いたことさえが正しいのか怖くなる。
それがサッカー。
さあ、今日もサッカーとしっかり向き合って生きなければいけない。
2021年1月28日
三浦泰年
これは少年少女に対するサッカーの躾の言葉として適切なのか?
それは「君は技術が低いからそんなプレーはいらない」、だから「前へ…」と、子どもの可能性を省いてしまうサッカーの躾がまだ多いのではないか?
レストランに行くと、大きな声で叫び出したり、泣き出したりする子どもと、静かに座って食べる子どもがいるように、大人の躾で子どもは変わる。同じことが選手にも言える。ただ、それでも大人になってどんな人間になるのかは分からない。これもまた選手も同じだ。
躾だけが出来ても、言われたことだけ守れてもダメなのであり、自分で社会を知る、サッカーを知ることが大事になってくるのである。
ウチは個人を教えるので負けても良い――。
ウチは何をしても何を使っても勝てば良い――。
二つの言い分は正反対に思うが、実は同じことを教えているのであろう。技術を教えること、勝ち方をそれぞれ押し付けていて、サッカーを教えていない。
僕は子どもの頃、この両面にアプローチした指導を受けて育ったサッカー少年である。
だから子どもの頃、カズより技術の高い、巧い、カズより速い、カズより身体の強い選手は当時、何人もいた。
ただ54歳で現役を続けられる選手は彼しかいない。
それは子どもの頃からのサッカーでの躾から始まり、彼がいろんな人から学び、吸収し、今でも全てを総合してプロのサッカー選手であることを知っているから続けられるのであろう。
世界で通用する選手を育てるには、ひとつの要素を強くアプローチするだけでは限界がある。生まれ持った能力、才能も必要だ。そんな中で「気持ち」があれば可能性は生まれる。やる気がなければ話にならない。
だからまずは、気持ちの強い、やる気のある選手であることが大前提になる。その気持ち、胸を指して心の部分はサッカーにおける脳であり、認知能力というインテリジェンスの根源になる。
そしてその「サッカー」に、なんらかの問題があるとすれば、指導者の関わり方がより大事になるのである。
今の時代、あのブラジルでさえ、僕が理想としていたブラジルではない……。世界一のサッカー王国のサッカーではない。
日本は育成の話になると、他所の真似をしたがる傾向にある。スペインになったり、ドイツになったり、フランスになったり、南米、東欧……。いろんな国から学ぶのは良いことだが、日本人の持つストロングを生かしたサッカー育成論が必要だ。
もうブラジルでさえ、鵜呑みに信じてはいけない時代になっているのだから……。
このコラムを書きながら、果たして自分の書いたことさえが正しいのか怖くなる。
それがサッカー。
さあ、今日もサッカーとしっかり向き合って生きなければいけない。
2021年1月28日
三浦泰年