武藤への正式オファーの本気度は? 「チェルシーの思惑」を現地識者が読む

カテゴリ:メガクラブ

山中忍

2015年04月10日

「労働許可証」という加入前のハードルも。

非EU国籍の武藤がプレミアでプレーするためには、英国の労働ビザ取得が必要だが、現時点では取得条件を満たしていない。この問題も含め、「チェルシーの戦力」への道は平坦ではない。 (C) SOCCER DIGEST

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 前線アウトサイドには、今シーズンのプレミア年間最優秀選手の呼び声が高いエデン・アザールと、技巧とハードワークを併せ持つモウリーニョ好みのウィリアンがいる。控えの駒には今冬にコロンビア代表のファン・ギジェルモ・クアドラードを加えたばかり。噂される新セントラルMFが今夏に実現すれば、来シーズンはセスク・ファブレガスのトップ下起用でオスカールが2列目アウトサイドに回る機会も増えそうだ。
 
 ストライカーとしてはエースのジエゴ・コスタが別格。代役のロイク・レミも経験と実積で武藤を凌ぐ。ディディエ・ドログバには引退の可能性があるが、クラブの理想と英国人ファンの希望からすれば、10代でチェルシー入りしたパトリック・バムフォードを新CFとして試したいはずだ。2部のミドルスブラにレンタル移籍中の21歳は、シーズン合計20得点台に乗せるペースで、プレミア昇格を争うチームにゴールという浮力を与えている。
 
 しかも非EU国籍の武藤には、労働許可証という加入前のハードルもある。現状では過去2年間で代表戦75パーセント以上出場という取得条件を満たしていない。「傑出した才能の持ち主」と認められれば特例もあるが、英国移民局が一目置くと言われてきた申請クラブは、アレックス・ファーガソン監督時代のマンチェスター・ユナイテッドとアーセン・ヴェンゲル率いるアーセナル。復活2年目の「モウリーニョのチェルシー」に、どこまでの説得力があるかは疑問だ。
 
 現実的には、ビザ取得の可否にかかわらず、チェルシー契約下の選手として、まずは欧州大陸のクラブに最低1年間レンタルというシナリオが妥当だろう。
 
 だがそれも、すべては本人次第。オファーを「光栄に思う」というコメントは現地にも伝えられているが、いまの武藤が最も意識すべきは実戦を重ねての成長だ。「欧州強豪」という夢と「常時出場」という現実を天秤にかけなければならない。
 
 武藤のチェルシー入りは、まだ噂に「正式オファー」という毛が生えた程度にすぎない。周りは興味をもって進展を見守るしかない。長らくアブラモビッチがご執心と言われたクリスチアーノ・ロナウドの「次世代和製版」が、青いユニホーム姿でプレミアのピッチを駆ける日が来ると願いつつ。
 
文:山中忍
【著者プロフィール】
1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
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