手堅さが裏目に出た痛い敗戦。森保ジャパンに求めたい冒険心【記者コラム】

カテゴリ:日本代表

本田健介(サッカーダイジェスト)

2021年09月03日

まさかの黒星スタート

最後までゴールが遠かった日本。痛恨の敗戦を喫した。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

画像を見る

 森保ジャパンがまさかの黒星スタートを強いられた。

 来年2022年に開催する予定のカタール・ワールドカップに向けたアジア最終予選。グループA、Bそれぞれの上位2か国、計4か国が本大会に進み、3位でもプレーオフを勝ち進めば出場権を得られるレギュレーションで、日本はオーストラリア、サウジアラビア、中国、オマーン、ベトナムと同組。ホーム&アウェー10試合を戦うなかで、初戦のホームでのオマーン戦は勝点3を得なければいけない試合だった。

 しかし、試合終了間際によもやの失点。誰もがうなだれるようなショッキングな敗戦(●0-1)だった。厳しい試合になった原因はいくつかある。

 まずはコンディションの差。多くの海外組を抱える日本は、8月30日に17選手が日本に集まり、翌日の31日に5人が加わって、9月1日に前日トレーニングを行なった。これまでの常連メンバーだけにベースは築けていたが、計3日と準備の日数が限られた日本に対し、約1か月の合宿を張ってきたオマーンとの差は明らかだった。

 これはオマーンに周到な“日本対策”を講じる時間を与えたことにもつながっている。中盤をダイヤモンド型にした4-4-2という、日本の4-2-3-1とのギャップを生じさせる、オマーンの戦術は、選手たちの組織だった動きも加わり、試合を通じて日本を苦しめた。

 また日本にはアクシデントも続いた。アーセナル移籍が決まったCB冨安健洋はメディカルチェックに備えて合流できず、ボランチの守田英正はポルトガルからの移動時間の関係で、日本政府とJFAが新型コロナウイルスの影響から事前に取り決めていた「3日前入国」に間に合わずに、こちらもエントリーできず。板倉滉と南野拓実も怪我を抱え、前者は途中離脱し、後者はオマーン戦でベンチ入りしたが、起用はできなかった。

 さらに試合前から強く雨が降り注いだグラウンドは、日本にとってホームながらパスを回すには適した状態ではなかった。序盤からミスが続いた日本は、リズムをなかなか作り出せなかったのだ。
 
 こうしたいくつかの要素はあった。ただ、オマーン戦の日本は、これまでの課題でもあったように“素直すぎた”印象が拭えない。ここまでの戦いを通じて、個人的には森保一監督のマネジメントには好感を持っている。どんな時も決して手を抜かず、相手をリスペクトして100パーセントの力で真っ向勝負を挑む。“真っすぐ”な戦い方はその人柄を示しているようで、選手との信頼関係もしっかり築けていたように映る。

 攻守の切り替えを強く意識し、ミドルゾーンでの強度の高いプレッシングから素早く攻め、遅攻の際には後方からのビルドアップを生かしつつ、サイドを活用してチャンスを探る。守備の決まり事も統一されているように感じ、東京五輪代表を含めた「1チーム、2カテゴリー」のなかでオーソドックスなベースはできていた。

 オーバーエイジで東京五輪に出場した酒井宏樹(オマーン戦後、オーバーワークを考慮されてチームから離脱)らコンディションが整わなかったため、オマーン戦は失点したとはいえ、最終ラインの安定感は歴代最高と捉えられる。

 それでも相手の出方が想定を上回った際や、相手が事前のスカウティングとはやり方を変えてきた際の苦戦は森保ジャパンが抱えてきた課題で、オマーン戦でもそれが出たと言える。

 前述したように南野、冨安、板倉、守田を欠いたなか、森保監督は予想通り、CBに植田直通、左サイドハーフに原口元気を先発させている。これ自体は最終予選の初戦ということで、手堅い選択として理解できる。ただ入念な準備を施してきたオマーンにとってはイメージ通りの形だったはずだ。

 指揮官は試合後、中盤にアンカーとインサイドハーフ、トップ下を置き、中央を厚くしたオマーンに対し、日本のSBを生かした攻撃を指示していたと振り返り、後半はその意図も見て取れた。それでも日本はオマーンの想定を上回る攻撃を見せることはできなかったと言える。

 手堅く戦うことは悪くない。それでも紙一重の勝負になってくる最終予選では、相手の裏をかくような柔軟な采配が必要なのではないか。明らかに身体が重そうだった、トップ下の鎌田大地、CF大迫勇也に代え、後半から古橋亨梧を最前線、久保建英をトップ下に入れるなど、ガラッと目先を変えるのも手だったようにも思える。

 こうした有効な“プランB”を持たない点は今後に向けた不安要素だ。今回、FW登録が大迫と古橋のふたりだけで、DFに枚数を割いた選手構成もオマーン戦では裏目に出たと言える。古橋、堂安、久保を投入したあとに、ベンチにいたのは負傷を抱えた南野を除き、DFとGKだけだった。

 もっともベンチワークとともに、選手たちも自分たちの状況を見極め、苦境を打破する強気な振る舞いが必要だっただろう。狙いはあったが、どこか漠然と攻め、守り、オマーンにそのまま敗れた印象もある。

 9月7日に行われる“アウェー”の第2戦の中国戦は、中国国内の新型コロナウイルス対策による厳しい入国制限を受けてカタールで開催される。日本はオマーン戦後、カタールに移動したが、第1戦のオーストラリア戦もカタールで戦った中国は、現地で調整を進めている。コンディションの差は再び、日本の大きな壁となるだろう。

 早くも1敗を喫したことで、今後、思い切った采配、選手起用をしにくい状況になりかねない。選手にかかるプレッシャーも増すだろう。それでも勇気ある思い切った一手、パフォーマンスが苦境を抜け出すキッカケになることは往々にしてる。この敗戦を糧に冒険心を持ち、挑む姿を見せてもらいたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

【PHOTO】パナソニックスタジアム吹田に駆けつけた日本代表サポーターを特集!

【W杯アジア最終予選PHOTO】日本0-1オマーン|引いた相手を崩せず…終盤に失点を許しまさかの黒星発進…!

【PHOTO】W杯アジア最終予選オマーン、中国戦に臨む日本代表招集メンバー24人を一挙紹介!

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 唯一無二の決定版!
    2月15日発売
    2024 J1&J2&J3
    選手名鑑
    60クラブを完全網羅!
    データ満載のNo.1名鑑
    詳細はこちら

  • 週刊サッカーダイジェスト いざW杯予選へ!
    3月8日発売
    元代表戦士、識者らと考える
    日本代表の現在地と未来
    2026年へのポイントは?
    J1&J2全クラブ戦力値チェックも
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 夏の移籍を先取り調査!
    3月21日発売
    大シャッフルの予感
    SUMMER TRANSFER
    夏の移籍丸わかり
    完全攻略本2024
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ