【川崎】17年、18年とは異なる感慨深さ。等々力での歓喜の中心にあった“14番”への賛辞

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2020年11月26日

小林悠、大島僚太らチームメイトの想いは…

中村(写真右)と小林がシャーレを手に喜び合う。小林は先輩への想いも語っていた。写真●金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 歴代最速、最多勝点、最多勝利数、G大阪を5-0で下し、2年ぶり3度目のリーグ制覇を圧巻の成績で果たしたチームの中心には、今季限りでスパイクを脱ぐ14番の姿があった。

 小林悠は今季限りで引退する中村憲剛について改めてこう話してくれていた。

「優勝したらまずはケンゴさんを探すかなと思います」

 小林にとって中村は、公私ともに多くの時間を共有してきた恩人以上の存在である。引退の意思を伝えられた時には、大粒の涙を流し、改めて感謝を伝えたという。

「(J1通算)100ゴールを決めた時にDVDをプレゼントしてもらって、自分の100ゴールを見返した時に、ケンゴさんからのアシストが多すぎたんです。自分の100ゴールを見たはずが、俺はケンゴさんに決めさせてもらっていたんだなと実感しました。俺はケンゴさんがいたからやれたんだなと。引退すると言われた時は、泣きながらそれを伝えました。ケンゴさんがいたから、ここまでゴールを積み重ねられたと。本当にありがとうございますと」

 宣言どおり、歓喜のホイッスルが響いた瞬間、真っ先に14番に抱きついたのはやはり小林だった。中村に話を振れば「良いところにポジションを取っていたなと。逃げようかと思ったが、逃げれなかった」と笑って振り返りながら「彼とは長く、苦しい時期も共にしてきた。こういう風にふたりで喜べるのは感慨深かったですね」としみじみと語る。

 ちなみに小林は「ケンゴさんとは一生の仲だと思うので、これからも一緒にプレーはできなくとも、常に連絡を取り合うと思いますし、ずっと一緒にいたい存在です」と話し、「もしかしたらケンゴさんが将来監督になった時にコーチをやれれば良いなとも思います」と夢を口にする。ふたりがタッグを組む姿を想像すれば、楽しみも広がるだろう。
 
 また86分に登場した中村は、その場で感動的なシーンを迎えている。ピッチ脇で交代をする大島僚太からキャプテンマークを腕に巻いてもらったのだ。この日はキャプテンンの谷口彰悟が出場停止で、副キャプテンの大島、守田英正が揃ってプレー。本来なら大島が交代する際に、腕章は守田に渡るはずだったが、後輩想いの大島は守田に確認を取りながら「交代するというのを監督に聞いた時にやっぱりケンゴさんにつけて欲しいなと思いました」とにくい演出をしてみせた。

 大島といえば、「プロとしてやっていくうえで、ほとんどのことをケンゴさんに学ばせてもらったと思っています。感謝してもし切れない存在です」と、その存在の大きさを語っていた。だからこそ、中村に最高の形で優勝の瞬間を迎えてほしいとの想いが強かったのだろう。

 中村も数年に渡ってその成長を見守ってきた大島の行動に目を細める。試合後にはこう胸の内を明かしてくれた。

「キャプテンマークは、守田に渡すべきだと思っていたんですよ。でもリョウタが巻いてくださいと。なんだかリョウタが入ってきた頃を思い出しましたね。そこから2人で、話しながら成長する姿も見てきた。あの時は感動しました。育て方が合っていたなと(笑)。いろんなことを考えられる優しい子で、彼がいるからこそ、自分もここ5年ぐらいは輝けたということもありました」

 歓喜の瞬間を迎えた後、中村はピッチの上でチームメイトたちと喜びをともにしながら、この日はスタンドで試合を見守った谷口彰悟、山村和也らが姿を現わすと満面の笑みで熱い抱擁をかわす。誰もが中村との思い出があり、想いがある。それは中村も然りである。勝利の美酒に酔いしれながら、互いが感謝の気持ちを表現していたのだろう。

 同じく等々力で決めた17年のリーグ優勝は多くの涙が光り、アウェー・長居で決めた18年の優勝は、敗れながら戴冠を迎える珍しい経験のなかで凱歌をあげた。

 そして2020年11月25日、新たな歴史を刻んだその日、中村の笑顔には、後輩たちに後を託せるとの安堵もまじっていたように映る。

 過去2年とはまた異なった歓喜の瞬間。感慨深さはまたひとしおだ。残るはリーグ4戦と天皇杯。中村のラストダンスに誰もが寄り添い、クラブ初の1シーズンでの複数タイトル獲得を目指す。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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