アジアカップ2015

【アジアカップ】サウジ、ウズベク連破で8強へ 緻密な戦略を搭載した中国のサプライズ

カテゴリ:国際大会

熊崎敬

2015年01月15日

狭い局面でもトライアングルを組んで確実にパスをつなぐ。

 サプライズ第1弾の主役となったのは、「眠れる獅子」中国だった。
 
 初戦でサウジアラビアを1-0で下した彼らは、続くウズベキスタン戦も2-1の逆転勝ち。1試合を残してグループリーグ通過を決めてしまった。
 
 サウジ、ウズベクという強豪を連破したこと自体驚きだが、なによりもサプライズだったのはウズベク戦の内容だ。ぼくはいままで中国のゲームを数多く見てきたが、この試合はベストかもしれない。それくらい興奮してしまった。
 
 パワーはあるが大雑把、劣勢に立たされると辛抱できずに暴発する――。それが従来の中国だった。
 
 だがウズベク戦では先制されながら、つねに主導権を握り、前半と後半で大きくスタイルを変えてウズベクを押し切った。
 
 交代が行なわれるたびに配置が変わり、プレースタイルが変わっていく。それは少し大袈裟にいえば、2002年の日韓ワールドカップでイタリアを倒した韓国の「ヒディンク・マジック」を彷彿とさせた。
 
 フランス人のアラン・ペラン監督率いる2015年版中国は、伝統の力強さをそのままに緻密な戦略が搭載されている。
 
 4バックと5バックを巧みに使い分け、ロングパスが得意な選手がフリーで前を向けるようなローテーションが浸透。最終ラインから無闇に蹴飛ばしたりせず、狭い局面でもトライアングルを組んで確実にパスをつなぐ。
 
 前半は大きく開いたウイングバックにボールを回し、再三クロスを放り込んでいたが、後半になってウズベクの動きが落ちてくると、中盤での素早いパスやドリブルを交えて敵陣を切り裂いた。
 
 アーリークロスからのチャンスを仕留めた1点目、タックルを吹き飛ばすようにして決めた2点目のドリブルシュート、どちらも日本代表ではお目にかかれない豪快なプレーだった。
 
 チームだけではない。ゴール裏を真っ赤に染めた「球迷(サポーター)」の力強い応援も印象に残った。
 
 街の中心部に大きな中華街が存在するように、ブリスベンには数多くの中国人が暮らしている。この試合に足を運んだ1万3000人のファンのうち、6割以上は中国人だったと思う。その中国人たちが迫力満点の応援を繰り広げたのだ。
 
 試合が行なわれたブリスベン・スタジアムのキャパシティは5万2500人。つまり、スタジアムは空席だらけだった。だが、空席はあまり気にならなかった。それは中国人の歓声が日本人の3万人、4万人に匹敵するくらい大きく、太いからだ。
 
 プレーが軽やかな日本はファンの声援も軽やかだが、プレーの一発一発が重く荒々しい中国は応援もまた重い。
 
 ボールを奪ったり、前進するたびに、彼らは大声を上げる。それは映画で見る、合戦の鬨の声のようだ。なんでもないプレーでも「ドカーン!」と大歓声が上がり、なにかすごいプレーが飛び出したかのような錯覚に陥ってしまう。これはアドバンテージだろう。
 
 3分のロスタイムが過ぎ、タイムアップを告げる笛が鳴り響くと、スタジアムは割れんばかりの大歓声に包まれた。真っ赤に染まったゴール裏には、こんな即席の横断幕が掲げられた。
「中国隊真牛!」
 
 真牛とは「素晴らしい」、「格好いい」という言葉。たしかに、この夜の中国は最高に素晴らしかった。この大会のダークホースになりそうだ。
 
取材・文:熊崎敬

チームを後押しするのが、「球迷(サポーター)」たちの力強い応援だ。 (C) Getty Images

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