【現地発】オランダに大逆転勝利を許したドイツ。レーブ監督が世代交代を推し進めるチームの”かみ合わなさ”を解決する方法は?

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2019年09月12日

グループCで首位を維持しているが…。

世代交代を図り、新たなチーム作りを推し進めているレーブ。その成果は…。 (C) Getty Images

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 9月6日、ドイツ代表はオランダ代表をホームに迎えたEURO2020予選第5節を、2-4で落とした。

 ドイツは、9分にカウンターからセルジュ・ニャブリが決めて先制したが、後半になってオランダの攻勢に押し込まれると、ミスも重なり連続失点。4連勝中の北アイルランドと勝点3ポイント差の2位へと順位を下げることになった。その後、10日に行なわれた第6節で北アイルランドとの直接対決を制して首位に返り咲いたものの、この試合でも、前半は北アイルランドの積極的な守備に苦しむ場面が多く、まだ新生ドイツには十分な安定感は備わってはいないようだ。

 どんなチームにも、うまくいかない試合というのはある。特に、世代交代を押し進めているドイツ代表チームは、国際舞台での経験が十分に備わっているわけではない。まだまだ調子の波があるのは確かだが、ヨアヒム・レーブ監督の対処は十分だったのかというのが気になった。

 ユーロ予選に挑むにあたり、若いメンバーであることを考慮し、どのような選択肢を持つべきだったのか。その点において、オランダ戦でのレーブ監督の采配は残念ながら満足のいくものとはならなかった。

 例えば、1-1と同点に追いつかれた直後の60分、ティモ・ヴェルナーとマルコ・ロイスのFW2枚を下げ、カイ・ハベルツとイルカイ・ギュンドアンの2枚を投入。この交代の意味するところは何だったのか。レーブは試合後の会見で、本当は1-0の状況でふたりを投入し、試合を落ち着かせたいと思っていたことを明かしている。

「あの時間帯、前線でボールを収めることが困難になっていた。そこでMFの位置から前線も動き出せるハベルツと、ボールを失わないギュンドアンを投入することで安定を取り戻したいと思っていた」

 狙いは分かる。だが結果としてこの交代劇はチームにポジティブな影響をもたらさなかった。中盤の構成力とポゼッション率を上げるはずが、ニャブリは前線で完全に孤立し、ハベルツはポジショニングが中途半端でボールにほとんど絡むことができずじまい。残り10分を切ったところでユリアン・ブラントが投入されたが、こちらも効果的なプレーを見せることができなかった。

 ミックスゾーンで選手を待っている間、周りのドイツ人記者たちは「まずギュンドアンを投入して、中盤を修正し、それからブラントを入れて攻撃を活性化という順番が良かったのではないか」とディスカッションをしていた。

 もう一点、気になるところがあった。ヨシュア・キミッヒが「2-2、あるいは2-3のまま試合を終えられたらまだよかったけど。そうしたらオランダとの直接対決の成績はイーブンのままだったから」と終了間際に喫した最後の失点を特に悔やんだが、なぜニクラス・ジューレを前線にあげ、パワープレーを決断したのか。

 ユーロ予選全体で考えれば、無理に同点ゴールを狙うよりも、最悪2-3での負けを受け入れて、オランダとの直接対決の戦績を「1勝1分け、得点失点が同じ」という条件にしておいた方がよかったのではないだろうか。

 指揮官は試合の流れを読むクレバーさが大事だとよく言われるが、その意図をどのように選手に伝えるのかは、指揮官次第であり、その手腕が問われるところだ。ただ、その辺りの選手起用や采配がここ最近、どうもあまりうまくはまっていないのではないか、という議論は、ドイツファンの間でも盛んになっている。

 これに関してはレーブ本人どうこうだけではなく、マルクス・ゾルク、トーマス・シュナイダーというアシスタントコーチで大丈夫なのかという論点もある。長年アシスタントコーチを務めていたハンシィ・フリックが抜けたことで戦術的バリエーションの構築に少なからず不安があるのは確かだ。

 かつてレーブは、ユルゲン・クリンスマン監督の右腕として戦術を担当していた。当時無名の存在ながらモダン戦術への理解が深かったレーブがいたからこそ、ドイツは母国開催となった06年W杯で3位という好成績を収めることができた。

 現在、レーブの立ち位置はそこではない。今も優れた指導者であり、戦術家なのは変わりないが、本人がすべき仕事も、求められる役割も違う。そして現在の戦術により精通した新時代の若い優秀な戦術家が隣に必要なのかもしれない。かつてレーブ自身がそうだったように。
 
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかのきちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中。

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