開幕戦で垣間見せたネルシーニョ采配の真髄!! 柏にJ1優勝時の競争原理が復活する!?

カテゴリ:Jリーグ

鈴木潤

2019年02月28日

「監督からバチバチやれと言われているわけではない」(瀬川祐輔)

今季から再び柏の指揮を執るネルシーニョ監督。チームを1年でJ1に復帰させることができるか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 81分、ネルシーニョ監督が最後の交代のカードとしてピッチへ投入したのは、プロ2年目の田中陸だった。
 
「陸は非常に若く、個性のある質の高いタレントです。守備に重点を置きながらも攻撃に切り替わった時に前線に攻撃参加できる選手を必要としていたので、あのタイミングで陸を使いました」
 
 ネルシーニョ監督は、田中起用の理由をそう話した。
 
 ただし驚くべきは、田中は弱冠19歳、しかもこれが記念すべきプロデビューの試合ということである。リーグの開幕戦で、柏のリードはわずかに1点。試合をクローズさせるために、アディショナルタイムを含めた約10分間の時間を、公式戦出場経験のない若者に託せる指揮官がいったいどれだけいるだろうか。
 
 しかしこれこそが、ネルシーニョ采配の真髄である。
 
 1月15日の始動以降、柏には昨年までにはなかった緊張感がチーム全体に充満している。各選手が定位置獲得へ向けたギラギラとした感情を露わにし、トレーニングでは実戦さながらに、球際の激しいバトルが繰り広げられている。
 
「監督からバチバチやれと言われているわけではなく、選手一人ひとりの危機感が、それを生んでいる」
 瀬川祐輔はチーム内の現状をそう説明してくれた。
 
 ネルシーニョ監督の選手起用の基準はシンプルである。トレーニングで良ければ起用し、逆にパフォーマンスが悪ければ、いくら経験豊富なベテランであろうと使わない。柏がかつてJ2を戦った2010年。当時プロ1、2年目だった酒井宏樹、工藤壮人、茨田陽生を抜擢し、主力選手へのブレイクを促したのもネルシーニョ監督だった。
 
 そんな過去の事例をもとに、布部陽功GM、井原正巳ヘッドコーチ、栗澤僚一コーチ、大谷秀和ら、第一次政権時を知るスタッフ・選手から「監督は良ければ使ってくれる」という話が、今の選手にも伝えられていた。そして今年の指宿キャンプでは、毎日のようにスタメン組のメンバーに入れ替わりがあった。昨日はサブ組に入っていた選手が、今日はスタメン組でプレーをしている。それを目の当たりにしたサブの選手たちは「じゃあアピールすれば、俺もスタメン組に入れる」とモチベーションは一気に膨れ上がる。逆にスタメン組の選手は「ポジションを奪われないように、もっと良いプレーをしなければいけない」と危機感を持つ。そのお互いのせめぎ合いが、瀬川が口にした“バチバチ感”へつながったのだ。
 
 つまり、山口戦での田中の抜擢は、ネルシーニョ監督からすれば、トレーニングで良いプレーを続けていたから田中を起用しただけであって、ごく当たり前の采配をしたにすぎない。起用された田中は、独特の緊張感に硬くなるどころか、伸び伸びとしたプレーを見せ、惜しくもプロ初ゴールは叶わなかったもののチャンスに顔を出した。調子の良さを窺わせた。
 
 指揮官の目論見どおり、柏は2−1で逃げ切り、1年でのJ1復帰へ向けて幸先の良いスタートを切った。
 
 若手が台頭し、それに刺激を受けたベテランが奮起する。そのサイクルがチーム力の底上げを促す。第一次政権時と同じように、2019年の柏にも健全な競争原理が芽生え始めた。
 
取材・文●鈴木 潤(フリージャーナリスト)
 

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