忘れがたいテベスとのエピソード
日本人の常識では考えられないことが起きる南米サッカーの舞台裏を、長年に渡ってフィルムに収めてきたカメラマン、ハビエル・ガルシア・マルティーノ。
そんなベテランカメラマンが、これまでに収めてきた中から厳選した写真とともに、南米サッカーの興味深いエピソードを紹介する新連載『ハビエルの秘蔵写真館』をお届けする。
記念すべき“1枚目”は、ボカ・ジュニオルスのオフィシャルカメラマンである彼だからこそ知り得るエピソードとともに紹介する。
―――◆―――◆―――
私はもうかれこれ20年ほど前から、ボカ・ジュニオルスのオフィシャル・フォトグラファーを務めている。当初は特にボカのファンというわけではなかったが、常にチームと行動していると監督やスタッフ、選手たちと自然に親しくなって情が芽生えるもので、今ではすっかりボカ・ファミリーの一員となってしまった。
これまで何人もの監督や選手たちとともに体験したことは、喜びも悲しみも含めてどれもかけがえのない思い出だが、中には特に興味深い、忘れ難いエピソードというものがいくつかある。今回はその中からつい最近起きた出来事について、1枚の写真と一緒に紹介したい。
それは、今年1月4日からスタートしたボカの夏期キャンプでのこと。選手たちが練習を終えて宿舎に向っていた時、カルロス・テベスが困惑した表情でチームのセキュリティー責任者のフアンに何やら話しかけていた。
そんなベテランカメラマンが、これまでに収めてきた中から厳選した写真とともに、南米サッカーの興味深いエピソードを紹介する新連載『ハビエルの秘蔵写真館』をお届けする。
記念すべき“1枚目”は、ボカ・ジュニオルスのオフィシャルカメラマンである彼だからこそ知り得るエピソードとともに紹介する。
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私はもうかれこれ20年ほど前から、ボカ・ジュニオルスのオフィシャル・フォトグラファーを務めている。当初は特にボカのファンというわけではなかったが、常にチームと行動していると監督やスタッフ、選手たちと自然に親しくなって情が芽生えるもので、今ではすっかりボカ・ファミリーの一員となってしまった。
これまで何人もの監督や選手たちとともに体験したことは、喜びも悲しみも含めてどれもかけがえのない思い出だが、中には特に興味深い、忘れ難いエピソードというものがいくつかある。今回はその中からつい最近起きた出来事について、1枚の写真と一緒に紹介したい。
それは、今年1月4日からスタートしたボカの夏期キャンプでのこと。選手たちが練習を終えて宿舎に向っていた時、カルロス・テベスが困惑した表情でチームのセキュリティー責任者のフアンに何やら話しかけていた。
その後、フアンが私を呼び止め、その日の練習の写真を細かくチェックして欲しいと言ってきた。どうやらテベスが、左耳につけていたピアスを練習中に失くしたらしい。
テベスにとっては思い入れのある大切なピアスとのことで、翌朝、練習前にスタッフが探すことになったのだが、フアンは私に「テベスが練習開始時にそのピアスをつけていたかどうかを写真でチェックしてくれないか?」と頼んできた。もしかしたらすでに宿舎の部屋の中で失くしていた可能性もあったからだ。
私は宿舎に戻ると早速、その日に撮影した写真を調べてみた。幸い(偶然というべきか)選手たちが宿舎から出てくる様子を何気なく撮っていたので、ピッチに出てきたテベスの両耳にピアスがついていたこと、そして練習の途中から左耳のピアスだけがなくなっていたことも確認できた。
だが、ここまでわかると今度は、いつ、どこで、失くしたのかを徹底的に探りたくなるというもの。テベスが写っている写真を入念にチェックし続けたところ、その中の1枚にきらりと光る小さなものが写っていることに気づいた。私はヘディングしているテベスの左耳からピアスが外れた瞬間をとらえていたのだ。
翌日、早朝から、雨が降りしきる中、チームのスタッフがピアスを探し始めた。金属探知機を使いながら練習に使われたピッチを隅から隅まで見ているが、一向に見つからないらしい。
私は、例の“証拠写真”を見せ、ゴールエリア内に落ちているはずだと伝えたが、スタッフは「そこはもうチェックした」と言い張る。「そんなはずはない」と写真をもとに位置を正確に割り出し、再度エリア内を探索するように懇願した。
テベスがジャンプしたと思われる場所に金属探知機を持っていくと、「ピッ」という音とともに反応を示した。写真に写っていたとおり、ピアスはそこに落ちていたのだった。
その日の夜、私が宿舎で休んでいると、テベスからメッセージが送られてきた。聞けば、発見の手がかりとなった写真が欲しいと言う。選手たちからはいつも写真をせがまれるが、テベスから頼まれたのは、彼がボカに在籍した通算およそ5年のうち、これが初めてのことだった。
得点シーンでもなければ、タイトル獲得の瞬間でもないが、彼にとっても、私にとっても、後々まで「ピアス発見の鍵」として語り継ぐことのできる、思い出深い1枚となった。
文●ハビエル・ガルシア・マルティーノ text by Javier Garcia MARTINO
訳●チヅル・デ・ガルシア translation by Chizuru de GARCIA
テベスにとっては思い入れのある大切なピアスとのことで、翌朝、練習前にスタッフが探すことになったのだが、フアンは私に「テベスが練習開始時にそのピアスをつけていたかどうかを写真でチェックしてくれないか?」と頼んできた。もしかしたらすでに宿舎の部屋の中で失くしていた可能性もあったからだ。
私は宿舎に戻ると早速、その日に撮影した写真を調べてみた。幸い(偶然というべきか)選手たちが宿舎から出てくる様子を何気なく撮っていたので、ピッチに出てきたテベスの両耳にピアスがついていたこと、そして練習の途中から左耳のピアスだけがなくなっていたことも確認できた。
だが、ここまでわかると今度は、いつ、どこで、失くしたのかを徹底的に探りたくなるというもの。テベスが写っている写真を入念にチェックし続けたところ、その中の1枚にきらりと光る小さなものが写っていることに気づいた。私はヘディングしているテベスの左耳からピアスが外れた瞬間をとらえていたのだ。
翌日、早朝から、雨が降りしきる中、チームのスタッフがピアスを探し始めた。金属探知機を使いながら練習に使われたピッチを隅から隅まで見ているが、一向に見つからないらしい。
私は、例の“証拠写真”を見せ、ゴールエリア内に落ちているはずだと伝えたが、スタッフは「そこはもうチェックした」と言い張る。「そんなはずはない」と写真をもとに位置を正確に割り出し、再度エリア内を探索するように懇願した。
テベスがジャンプしたと思われる場所に金属探知機を持っていくと、「ピッ」という音とともに反応を示した。写真に写っていたとおり、ピアスはそこに落ちていたのだった。
その日の夜、私が宿舎で休んでいると、テベスからメッセージが送られてきた。聞けば、発見の手がかりとなった写真が欲しいと言う。選手たちからはいつも写真をせがまれるが、テベスから頼まれたのは、彼がボカに在籍した通算およそ5年のうち、これが初めてのことだった。
得点シーンでもなければ、タイトル獲得の瞬間でもないが、彼にとっても、私にとっても、後々まで「ピアス発見の鍵」として語り継ぐことのできる、思い出深い1枚となった。
文●ハビエル・ガルシア・マルティーノ text by Javier Garcia MARTINO
訳●チヅル・デ・ガルシア translation by Chizuru de GARCIA
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