【鹿島】PKストップの裏側。34歳の元韓国代表GKが小林悠に仕掛けていた駆け引き

カテゴリ:Jリーグ

サッカーダイジェストWeb編集部

2018年10月09日

会心のビッグセーブはいかしにして生まれたのか?

クォン・スンテのビッグセーブを讃える鈴木。最大のピンチを巧みな駆け引きで凌いだ。写真:田中研治

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[J1リーグ29節]鹿島0-0川崎/10月7日(日)/カシマ

 38分、キッカーのFW小林悠が助走をとると、GKクォン・スンテは最後までその動きを凝視し、微動だにしない。小林の右足がボールをとらえたその瞬間、素早く反応して左に飛ぶと、左手を伸ばしてゴールを死守した。
 
「2、3試合前(9月26日湘南戦)、真ん中に蹴っていたのを知っていた。最後まで真ん中を残しながら飛んだ。読んだコースにきたので止められた」
 
 会心のビッグセーブを見せた守護神が、PK場面をそう振り返った。
 
 35分、DFチョン・スンヒョンが小林を倒してPKを献上。失点を覚悟する場面で、ベテランの“巧さ”が光った。ボールをセットする小林の目の前に立ち、じっとボールを見つめるクォン・スンテ。審判にポジションに着くように促されると、ゆっくりとゴールラインへと歩みを進めたが、途中で振り返り視線を再び小林へ。そのまま2歩、3歩と後方へと下がった。
 
「ホームの多くのサポーターがいて自分たちには有利。わざとゆっくり時間をかけてプレッシャーをかけ、相手を圧倒する状況を作った。それがホームの最大の利点だ」
 
 ゴール裏には、クォン・スンテに声援を送り、小林に圧力をかける真っ赤に染まった鹿島サポーター。冷静さを心がけようとする小林の動揺を誘うために、34歳のベテランGKが巧みな駆け引きをみせた。
 
 試合は川崎の攻撃を無失点に抑えたが、0-0で引き分け。首位との差を埋めることができなかった。「勝たないといけない試合だったし、勝てなくて残念だった」と守護神は悔しさを滲ませたが、その活躍がなければ勝点1すら得られなかった。
 
 3日のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝、水原三星(韓国)との第1戦。1-2で迎えた前半終了間際、クォン・スンテは相手選手との小競り合いの際に警告を受けた。試合後、本人は反省をするが、これが仲間の闘志を突き動かした。
 
「あのプレーがチームのスイッチを入れた」と振り返ったのは内田篤人。序盤の2失点で消沈していた鹿島の士気は再び高まり、終盤の大逆転につながった。「やってはいけないことだとは分かっていたが、チームのためにも必要と思ってやった。勝ってよかった」と守護神は安堵した。
 
 最後の砦として“常勝軍団”を支える元韓国代表GK。「鹿島にはタイトルを取るためにきた」と言い切る。可能性の残るJリーグ、そしてクラブ初のアジアタイトル獲得のために、クォン・スンテが鹿島のゴール前に立ちはだかる。

【鹿島 0-0 川崎 PHOTO】首位川崎と3位鹿島の決戦はクォン・スンテのPK阻止でスコアレスドロー
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