欧州４大リーグのなかで一早く夏の移籍市場がクローズされたのが、イングランド・プレミアリーグだ。８月９日のリミットを前に駆け込み移籍が頻発。なかでも怒涛のラッシュを仕掛けたのが、名門エバートンである。
 
　昨シーズンのワトフォードを指揮したマルコ・シウバを新監督に招聘し、大々的な刷新に着手。監督の秘蔵っ子だったブラジル人MFリシャリルソンをワトフォードから3920万ユーロ（約51億円）で引き抜くと、バルセロナからフランス代表の左SBリュカ・ディーニュを2020万ユーロ（約26億2000万円）で釣り上げた。そして最終日、前代未聞のラストスパートを仕掛けるのだ。
 
　まずはマンチェスター・ユナイテッドやリヨンが強い関心を示していたコロンビア代表CBジェリー・ミナを再びバルセロナから獲得。ロシア・ワールドカップに出場して日本戦でも活躍した守備者には、3025万ユーロ（約39億3000万円）の巨費を投じた。続けてまたしてもバルセロナから、ポルトガル代表MFアンドレ・ゴメスを期限付き移籍でゲット。１年間のレンタル代は220万ユーロ（約２億9000万円）と報じられている。

 

　さらには、チェルシー、ミラン、インテル、ウェストハムと競合していたシャフタール・ドネツクのブラジル代表MFベルナールを移籍金ゼロで迎え入れた。そして最後のひとりが、昨シーズンはレンタル先のストークでプレーしたフランス代表CBクルト・ズマ。こちらは本稿執筆時点でクラブからの正式発表はなされていないが、複数の大手メディアが交渉成立と伝えている（プレミアリーグの認可待ち）。チェルシーからの１年ローン契約で、ズマは土壇場でマンチェスター・Uのオファーを袖にしたということだ。
 
　一日にして４人の即戦力を獲得し、エバートンが今夏に投じた強化資金の総額は9190万ユーロ（約120億円）に達した。
 
　ただクラブレジェントのひとりは、疑問を投げかけている。英公共放送『BBC Radio』の解説者で、元スコットランド代表MFのパット・ネビンだ。
 
「過去最大規模の補強に打って出たのは称賛に値する。でもセンターバックや中盤の創造性溢れるアタッカーを多く獲ったのはいいが、肝心の点取り屋はどうなった？　センク・トスンは良い選手だけど、彼だけじゃ心許ない。（攻撃的MFの）ギルフィ・シグルドソンに頑張れと言っても限界があるだろう。一番期待していた新ストライカーは獲れなかったということだ」
 
　と、残念がりつつも、最後は「この新レギュラーたちがどう機能するのか。新監督の腕の見せ所だな」と期待を寄せた。はたして土曜日の開幕戦、ウォルバーハンプトン戦ではこのなかから何人がピッチに立つのだろうか。