先週土曜日のJ1リーグ27節、鹿島アントラーズ対ガンバ大阪戦。アウェーチームの背番号10、倉田秋は、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が視察に訪れていた事実を伝えると、「え、まじっすか!? 来てた? ぜんぜん知らんかった」と驚きつつ、「どうかな……点取ってないしなぁ」と浮かない表情を見せた。
試合は、後半アディショナルタイムにCKから決勝点を奪われ、1-2の逆転負けを喫した。だがその試合で倉田が披露したのは、異常なまでのボールへの執着心。「相手が鹿島というのもあったけど、とにかく全力でプレッシャーを掛けるということを考えてました。個人での守備のところです」と力を込めた。
6月7日、日本対シリアの親善試合。前半10分で負傷退場した香川真司に代わって中盤2列目に入った倉田は、まるでアピールできなかった。48分には自身の緩慢なチェックで簡単にクロスを上げさせ、先制点を献上。守備面の課題が浮き彫りになった。6日後のワールドカップ予選・イラク戦でも後半から出番を得たが効果的な動きができず……。先の2連戦ではお呼びがかからなかった。
「それは悔しかったですよ。大事な2連戦のところで呼んでもらえなかったわけで、それなりに凹みました。でも、最後の最後まで絶対に諦めたくない。できるかぎりの努力をしてアピールして、滑り込みでもいいからロシアのメンバーに入りたい」
オーストラリア戦で鮮烈ゴールを決めた後輩、井手口陽介の活躍も「それは間違いなく刺激になってる」と語る。
鹿島のボールホルダーに食らいつき、スライディングタックルも試みた。84分に交代を命じられるまで、ピッチを広範囲に疾駆し続けた。「守備のところはかなりアピールできたのでは?」とあらためて問うと、「そこはやって当たり前のところ。その上で僕なんかは点を取って存在を示さないといけない」と言い切る。「(後半途中に)僕がエリア内で倒されたでしょ? あそこでPKをもらえてたら絶対に自分で蹴ったんですけどね」と悔しがった。
だが、本人の空振り感とは裏腹に、指揮官はしっかり評価していたようだ。メンバー発表会見でハリルホジッチ監督は、倉田の復帰についてこう説明した。
「この2試合でコンディションが上がってきている印象を受けました。プレースピードをアップさせる彼の能力は、我々にとって非常に興味深く、面白い」
思っていたよりも早く、返り咲きを果たした。このチャンスを逃す手はない。ちょこっとだけ進化した姿を、サバイバルの2連戦で披露できるか。青黒のナンバー10に注目だ。
文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
