今シーズン限りでバルセロナの監督を退任することを発表しているルイス・エンリケ監督。ラストシーズンでタイトルを獲得するため、現在は選手とともに日々、奮闘している最中だ。
 
　そんな彼は先週、３月28日（現地時間）に行なわれたフランス対スペインの親善試合で、バルサのジェラール・ピケが宿敵レアル・マドリーを痛烈に批判したことについて感想を求められ、こうコメントしている。
 
「私はピケよりも発言が過激だから、この件については何も言わない方がいいだろう。それぞれが、好きなように解釈してくれればいい」
 
　論争には加わらず、早々にこの争いの収束を図ろうと大人の対応を見せたL・エンリケ監督について、『sportskeeda』は指揮官の過去のバルサ、マドリーに対する“過激”発言を紹介するとともに、彼の“性質”についても言及している。
 
　L・エンリケがマドリーとバルサの両方でプレーした選手であることは、非常に有名な話だ。1989年にヒホンでキャリアをスタートした彼は、91年にマドリーに加入。ここで公式戦213試合に出場して18ゴールを挙げている。
 
　しかし、起用方法をめぐる首脳陣との対立によって、96年にバルサへの禁断の移籍を敢行。当初はファンに受け入れられなかったが、ここで選手として円熟期を迎えて活躍し、ついにはキャプテンとしてチームの象徴的な存在にまで昇り詰めた。
 
　2004年の現役引退までにバルサで300試合出場109得点を記録した彼は、指導者としてのキャリアもバルサ（B）でスタート。ローマ、セルタを経て、14年に帰還を果たすと、１年目で三冠を達成し、翌年には世界も制して全てのタイトルを勝ち取った。
 
　今や、完全に「バルサの人」であり、マドリー色を全く感じさせないL・エンリケだが、91年のマドリー入団時には、以下のように喜びを表現していた。
 
「マドリーに入るのは、自分にとって夢だった。たとえバルサより移籍金が15パーセント低かったとしても、マドリーに行くほうが価値は高い。念願だったマドリーの一員となれたことを、誇りに感じている」
 
　入団の喜びを語る上で、宿敵バルサを引き合いに出した彼。実際、クラシコでマドリーのゴールが決まった際には、バルサを挑発するような派手なジェスチャーを見せたりもしていたが、マドリーとの蜜月が終わると、その発言は180度転換することとなった。
 
「私はずっと、バルサのサポーターだった。最初は（故郷のクラブ）ヒホン、次にバルサだ。マドリーを退団した後、私は兄弟に電話して『ようやく本当の自分に戻れる』と語ったものだ。マドリーの白いユニホームを着た自分を見ると、それが自分だとは思えなかった」
 
　過激というのか、見事なほどの“適応ぶり”と言うべきか……。
 
　バルサに来てからはカタルーニャの文化に溶け込み、逆にマドリー時代のことは滅多に話さないほど、現在はそのスタンスが徹底しているが、『sportskeeda』はL・エンリケが、環境や状況に合わせて、発言の内容や過激さの度合いを自在にコントロールできる人間だと見ている。
 
　そして今回のピケ舌禍騒動への対応は、４月23日に敵地サンチャゴ・ベルナベウで行なわれるクラシコ（リーグの趨勢を決する可能性が高い）を見据え、できるだけ落ち着いた状況を作り出そうという意図によるものだという。