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5か月で2発…東京V内定の重圧から陥ったスランプでスタメン剥奪。流経大柏の大型ストライカー大藤颯太が復活の狼煙を上げるPK弾【選手権】

カテゴリ:高校・ユース・その他

松尾祐希

2025年12月31日

「自分を取り戻したいという想いが強くて、蹴りたいと言った」

流経大柏の大藤は、力強いボールキープで攻撃の起点に。PKでチームの3点目も決めた。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

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[高校選手権・2回戦]流経大柏(千葉)3-0米子北(鳥取)/12月31日/フクダ電子アリーナ

 FW大藤颯太(3年/東京V加入内定)にとって、希望を灯すゴールになったのは間違いない。

 何度も心が折れそうになった。仲間から「大丈夫」、「お前ならできる」とエールを送られても結果が出ない。優しい言葉に救われた一方で、スランプ中の自分をさらに追い込んだ。普段は温厚でおっとりした性格のストライカーも今までにないくらいに頭を悩ませたという。苦悩した5か月間を乗り越え、大事な選手権初戦でネットを揺らした。

 前回準優勝の流経大柏は、米子北と対戦。序盤から効果的に得点を重ね、3−0で勝利を収めた。来季からU-18高円宮杯プレミアリーグに復帰する“山陰の雄”と、優勝候補と目される開催地・千葉の強豪校。前売りチケットが完売したフクダ電子アリーナには1万3829人が詰めかけるなか、大藤は後半開始からピッチに登場した。

 190センチの高さとスピードを活かしたプレーで攻撃の起点となり、後半45分にはペナルティエリア左でファウルをもらう。

「自分を取り戻したいという想いが強くて、自分から蹴りたいと言った。鹿島戦のミスも取り返したいと思っていたので」(大藤)。

 10月5日のU-18高円宮杯プレミアリーグEAST・16節の鹿島ユース戦(0−2)でPK失敗の苦い記憶があったものの、自ら得たビッグチャンスを逃すつもりはない。キッカーに名乗りをあげると、冷静に右隅に決めてチームの3点目を奪った。

 ゴールが決まった瞬間、大藤は渾身のガッツポーズで感情を表現。「今大会は調子が良かった前期の自分を取り戻そうと思っていたので、(ゴールは)すごく良かったと思います」(大藤)。喜びを爆発させた後は、安堵の表情を浮かべた。

 今季に入ってトップチームに定着したストライカーはリーグ戦でゴールを重ね、前半戦は8得点をマーク。さらにリーグ戦で東京Vユースと対戦した際にトップチームの城福浩監督から高い評価を受け、これがきっかけでプロ入りが決まった。
 
 しかし――。そこからが苦悩の始まりとなる。

 ベスト4まで勝ち上がった今夏のインターハイでは学法石川との3回戦でゴールを挙げたが、夏以降はなかなかゴールを決められない。リーグ戦で無得点が続き、後半戦は最後までネットを揺らせなかった。

 選手権予選も準々決勝で1得点を奪っただけで、5か月の間に生まれたゴールはわずかに2つ。「調子が悪くになるにつれ、身体が動かなくなって、気持ちの部分でもどんどんネガティブな方向にいってしまった」と本人が振り返ったように、ゴールから遠ざかったことが負のサイクルを生み出した。

 そうした状況下でスタメンから外れる試合が増え、大事な選手権初戦となったこの米子北戦もベンチスタート。胸中は複雑だった。不甲斐ないプレーは見せられない。だからこそ、今日こそはゴールを決めたいと誰よりも願っていた。

 ようやく生まれた得点だが、大藤に浮かれた様子は見られない。ミックスゾーンでも険しい表情を崩さず、ここからが本当の勝負だと強調した。

「今日のゴールで吹っ切れたわけではないけど、ここから調子を上げていきたい」(大藤)。

 流経大柏が日本一を果たすためにも、大型ストライカーの爆発は不可欠。心配をかけた仲間やスタッフのためにも、余韻に浸っている暇はない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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