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熱狂の帰還から11か月――「テストする期間は終わった」4度目のW杯が遠のいたネイマールの現実【現地発】

カテゴリ:ワールド

沢田啓明

2025年12月17日

ファンが祝ったのは「優勝」ではなく「1部残留」

負傷離脱が多く、サントス1年目は不完全燃焼に終わったネイマール。W杯出場は厳しいか。(C)Getty Images

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 今年1月、サントスの町はカーニバルのような祝祭感に満ちていた。20歳でこのクラブを巣立った“放蕩息子”が、欧州と中東での冒険を終えて12年ぶりに帰還したからだ。

 スタジアムで有料の入団イベントが行なわれ、スタンドを埋めた地元ファンが彼、ネイマールの一挙手一投足に大歓声を上げた。「ここは僕の我が家」、「ブラジル全国リーグで優勝を目指す」というコメントに誰もが熱狂した。

 試合のチケットを優先的に購入しようと、クラブのソシオも激増した。しかし、あの熱狂から10か月後、ファンが祝ったのは「優勝」ではなく「1部残留」だった。

 度重なる故障のためリーグ出場は38試合中20試合に留まり、8得点・1アシスト。カップ戦を含めた全公式戦でも、28試合出場で11得点・4アシストだ。

 エースの不調に歩調を合わせて、サントスも降格圏で喘いだ。11月末にネイマールが故障から復帰し、すでに降格が決まっていた下位チーム相手ではあったがハットトリックを演じて勝利に貢献。最終的に、20チーム中12位の成績で残留した。

 一方、もう一つの目標だったセレソン復帰も果たせなかった。

 5月末にカルロ・アンチェロッティが監督に就任したが、これまで一度も招集されていない。メディアからネイマールの招集について聞かれるたび、監督は「彼に限らず、いかなる選手であろうと体調が100%でなければ招集しない」と繰り返した。

 これは、すでに体力的にも技術的にもピークを過ぎたネイマールを招集しないことへの明確な説明であり、なおかつヴィニシウスら他選手への戒めにもなっている。
 
 ワールドカップまでに残された強化試合は、来年3月の2試合だけ(26日のフランス戦と31日のクロアチア戦)。アンチェロッティは、「選手をテストする期間は終わった。3月はワールドカップ本番仕様のチームで臨む」と明言している。これまで一度も起用されていないネイマールが自身4度目のワールドカップ出場を果たす可能性は極めて低い。

 サントスとの契約は、12月末で満了する。今後について、本人は「これからクラブ関係者と話し合う」と語っている。

 現状では、欧州強豪クラブからのオファーは望めない。サントスと並んで彼が愛着を抱くフラメンゴは今年の国内王者にして南米王者。公私ともにトラブルが多く、高給を求める33歳を獲得するメリットはない。

 国内の他のクラブがオファーを出す可能性がわずかにあるが、サントスとの契約延長が濃厚だろう。

 来年は、1月11日に州リーグが、1月28日にブラジル全国リーグが開幕する。ワールドカップの登録メンバーは5月に発表される予定だ。

 ネイマールは一縷の望みをかけて、5月まではベストを尽くすだろう。しかし、ワールドカップ出場の夢が絶たれたり、靭帯断裂や骨折といった重大な怪我を負ったりするようなら、その時点で現役引退を表明する可能性もある。

「ペレ以来の才能」と謳われながら、私生活の乱れもあって故障が絶えず、プレー内容も低下した。かつてのロナウジーニョ、アドリアーノらと同様、いささか寂しいキャリア終盤を迎えている。

文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。 
 
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