センスだけではどうしようもならないところが
サッカーにおいて、ゴールキーパーは最も難しいポジションと言える。唯一、手を使うことを許される。その“特権”と引き替えに、厳しい目を向けられる。わずかな失敗も許されない。
「精神的に追い込まれるポジションだから、ぶっ飛んでいるところがないと、やっていけない」
それはサッカー現場で語られる真理である。
繰り返すが、GKは特別なポジションである。
たとえGK同士でも独特の関係性があって、一筋縄にはいかない。多くの場合、正GKはほぼ決定している。そのポストを無闇に脅かすのは、和を乱す厄介者と見られる。そこで耐え忍びながらも準備だけ整え、チームが勝ったときには喜ぶ。しかし一方、それが自らの出場を遠ざける結果だと愕然とし、そんな思考展開の自分を憎み、嫌になりながらも気持ちを入れ直し、再び戦いに挑む――。
GKは、精神的にぎりぎりの状態で生きることを余儀なくされている。
そもそも、フィールドプレーヤーとは構造が違う。
ストライカーだったら、いくら失敗しても奮起してゴールで取り返せばいい。プラスに向かって、気持ちの切り替えもできる。いくらシュートを外しても、一発でヒーローになれるのだ。
「精神的に追い込まれるポジションだから、ぶっ飛んでいるところがないと、やっていけない」
それはサッカー現場で語られる真理である。
繰り返すが、GKは特別なポジションである。
たとえGK同士でも独特の関係性があって、一筋縄にはいかない。多くの場合、正GKはほぼ決定している。そのポストを無闇に脅かすのは、和を乱す厄介者と見られる。そこで耐え忍びながらも準備だけ整え、チームが勝ったときには喜ぶ。しかし一方、それが自らの出場を遠ざける結果だと愕然とし、そんな思考展開の自分を憎み、嫌になりながらも気持ちを入れ直し、再び戦いに挑む――。
GKは、精神的にぎりぎりの状態で生きることを余儀なくされている。
そもそも、フィールドプレーヤーとは構造が違う。
ストライカーだったら、いくら失敗しても奮起してゴールで取り返せばいい。プラスに向かって、気持ちの切り替えもできる。いくらシュートを外しても、一発でヒーローになれるのだ。
しかしGKはいくらファインセーブをしても、一度のミスが尾を引く。「あの失点がなかったら」と語られる。マイナスで評価される十字架を背負う。
だから、GKのプレーヤーとしての成熟は、メンタルのところで出る。フィジカルやテクニックは大事だが、それを用いるためにメンタルが強く影響している。それ故、GKというポジションは晩成型が多い。Jリーグでも、西川周作(浦和レッズ)、菅野孝憲(コンサドーレ札幌)、川島永嗣(ジュビロ磐田)、東口順昭(ガンバ大阪)などは30代半ばから成長を示してきた。
GKは多くの場合、場数を踏むことで成長を遂げる。センスだけでは、どうしようもならないところがある。
例えば2023年のアジアカップ、正GKに抜擢された鈴木彩艶のプレーは、控え目に言ってよくなかった。少なくとも、失点に直結するプレーがいくつもあって、攻守を不安定にし、「戦犯」にも等しかったと言えるだろう。しかし気の毒なのは、鈴木本人がメンタル的にダメージを受けていた点だ。
当時、鈴木はJリーグでも、欧州でも1シーズン、しっかりとゴールマウスを守ったことがなかった。起こるべくして起こる悲劇だったのである。今や鈴木はベルギー、イタリアで試合を重ねた。当時とは違う自信を身につけつつある。それは続けることができたら、プレーを安定させるだろう。
多くのGKはゴールマウスを守り続ける、という研鑽を積んで、GKとして成熟できる。そこに真理がある。「ノビシロ」でベンチの間は、すべてが幻である。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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だから、GKのプレーヤーとしての成熟は、メンタルのところで出る。フィジカルやテクニックは大事だが、それを用いるためにメンタルが強く影響している。それ故、GKというポジションは晩成型が多い。Jリーグでも、西川周作(浦和レッズ)、菅野孝憲(コンサドーレ札幌)、川島永嗣(ジュビロ磐田)、東口順昭(ガンバ大阪)などは30代半ばから成長を示してきた。
GKは多くの場合、場数を踏むことで成長を遂げる。センスだけでは、どうしようもならないところがある。
例えば2023年のアジアカップ、正GKに抜擢された鈴木彩艶のプレーは、控え目に言ってよくなかった。少なくとも、失点に直結するプレーがいくつもあって、攻守を不安定にし、「戦犯」にも等しかったと言えるだろう。しかし気の毒なのは、鈴木本人がメンタル的にダメージを受けていた点だ。
当時、鈴木はJリーグでも、欧州でも1シーズン、しっかりとゴールマウスを守ったことがなかった。起こるべくして起こる悲劇だったのである。今や鈴木はベルギー、イタリアで試合を重ねた。当時とは違う自信を身につけつつある。それは続けることができたら、プレーを安定させるだろう。
多くのGKはゴールマウスを守り続ける、という研鑽を積んで、GKとして成熟できる。そこに真理がある。「ノビシロ」でベンチの間は、すべてが幻である。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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