［U-20W杯］日本 ２－０ エジプト／９月27日／エスタディオ・ナシオナル・フリオ・マルティネス・プラダノス

　可能性は無限大。若き才能の芽がどこで息吹くかは誰も予想できない。半年前まで所属クラブでサブに甘んじていたGKピサノアレクサンドレ幸冬堀尾（名古屋）だが、待ちわびた大舞台で堂々たるパフォーマンスを見せた。

　現地９月27日、船越優蔵監督が率いるU-20日本代表は、U-20ワールドカップの初戦でエジプトと対戦。グループステージだけではなく、大会全体のオープニングアクトとなった一戦で攻守に安定した戦いを見せ、２－０の快勝。ノックアウトステージ進出に一歩前進した。

「良い準備があったから、スムーズなプレーができた」と自身の出来を振り返ったのは、エジプト戦でゴールマウスを守ったピサノだ。197センチの守護神は、得意のビルドアップで存在感を示す。ボール保持率を高めたチームにおいて、最終ラインの間にうまく入ってパス回しに参加。ミドルレンジのフィードは正確で、ボランチに直接つけるような縦パスも精度は抜群だった。

　肝心の守備でも臆さずにプレーし、前半の半ばにはディフェンスラインの背後に出たボールを冷静に処理。相手と接触して一瞬ヒヤリとさせられたものの、すぐに起き上がってみせた。

　思い返せば、２年前のU-17ワールドカップは追加招集で第３GKという立場だった。後藤亘（FC東京）がレギュラーで、第２GKが上林大誠（山形）。第３GKは当初、荒木琉偉（G大阪）だったが、怪我の影響で待ち合わず、浦和ユース所属だった小森春輝（日本大）が招集される。しかし、その小森が負傷で辞退し、ピサノに白羽の矢が立った。

　大会で出番はなく、第３GKとしてチームを陰から支えた。「ベンチで見ているだけでも、すごく楽しい場所」だったと貴重な経験を積んだ一方で、悔しさも残った。
 

　24年シーズンから名古屋のトップチームに昇格したものの、出番はルヴァンカップの１試合のみ。今季も開幕当初は出場機会がなかった。４月には試合に絡めていない若手を対象に、ポストユースの強化策として開催されたU-22Jリーグ選抜の活動に参加。船越ジャパンでポジションを奪うには厳しい状況だった。

　しかし、名古屋の正GKだったシュミット・ダニエルの負傷離脱から風向きが変わる。J１第14節の清水戦でリーグ戦デビューを飾ると、足もとの技術を武器に台頭し、６月のモーリスリベロトーナメント（旧トゥーロン国際大会）でもアピールに成功。さらに今年７月にはE-１選手権でA代表デビューを果たし、瞬く間に世代のトップを走るGKに成長を遂げた。

　E-１選手権では同じGKの大迫敬介（広島）や早川友基（鹿島）らとプレーし、多くのことを吸収できたという。

「Jリーグでも毎試合、毎試合、凄い存在感を発揮している。それに比べれば、自分はまだまだ。もっとやらないといけないし、そういう選手たちを超えられるようになりたい。目標じゃないですけど、一つ基準ができたと思う」

　誰もが驚くような進歩で迎えた今回のU-20ワールドカップ。２月のU-20アジアカップで正GKを務めた荒木とポジションを競い、試合前日までどちらが出るか分からない情勢だった。「全然分からなかった」と本人も認める通りで、ハイレベルな競争から見事にスタメンを勝ち取った。

　初めて立つ世界大会の舞台。緊張感はあったが、楽しみながらプレーした男はまた１つ、経験値を高めたのは事実。「自分の成長が想定通りかと言われたら、それは違う。良い意味で上回ってきた」と自身も驚くスピードで進化を続けるピサノの挑戦はまだ始まったばかり。２戦目以降のパフォーマンスにも注目したい。

取材・文●松尾祐希（サッカーライター）

【画像】長澤まさみ、広瀬すず、今田美桜らを抑えての１位は？ サカダイ選手名鑑で集計！「Jリーガーが好きな女性タレントランキング」TOP20を一挙紹介

【画像】絶世の美女がずらり！ Ｃ・ロナウドの“元恋人＆パートナー”たちを年代順に一挙公開！

【記事】「国歌をしっかり歌って」森保一監督が試合前、選手に伝えた“大切なこと”。『君が代』の重みと日本人の誇り