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世界と渡り合った“超絶フィジカル”はいかにして生まれたのか。釜本邦茂さんが説いていた食の大切さ。「しなやかな筋肉は、いい骨がないと付かないんだ」【追悼】

カテゴリ:日本代表

サッカーダイジェストWeb編集部

2025年08月10日

「生まれ持っての凄い身体だったのかと訊かれたら、決してそうではない」

本誌やウェブサイトでもコラムが好評だった釜本氏。ご冥福をお祈りいたします。(C)SOCCER DIGEST

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 8月10日、日本サッカー協会は日本サッカー界のスーパーレジェンドである釜本邦茂氏が他界したと発表した。享年81。偉大なストライカーの突然の訃報となった。

 釜本氏は本誌「サッカーダイジェスト」でかつて月1コラムを担当していただき、「サッカーダイジェストWeb」でも日本代表戦解説などで時に優しく、時に辛辣に、時にユーモアを交えて持論を展開してもらった。常に日本サッカー界の現状と行く末を案じ、その進化と発展に熱い視線を注がれていた。

 現役時代、類まれなゴールセンスで世界をもあっと驚かせた釜本氏。ハイパフォーマンスを支えたのはずば抜けた身体能力とフィジカルだった。本誌連載「ガマッチョ」で、釜本氏がその秘密について語ってくれた回がある。日本サッカー界への愛ある提言。ひとつの貴重なメッセージとして、ここに紹介したい。

――◆――◆――

 ところで、身体能力ってなんだろうね。
 
 日本人選手はフィジカルが弱いから組織で戦ったほうがいい。よく聞く言葉だし、間違ってもいないと思う。それでも、局面で1対1での戦いはかならずあるし、避けては通れないもの。身体は鍛えられるだけ鍛えて、強ければ強いほうがいいに決まってる。
 
 僕は身体が強かったほうだし、ほとんど当たり負けというのも経験したことがない。よく「釜本の身体は日本人離れしている」とも言われたけど、じゃあ生まれ持っての凄い身体だったのかと訊かれたら、決してそうではない。
 
 家系みんなの背が高いわけじゃないし、肉付きがいいわけでもない。身体の骨格を形成する時期になにをしていたかで、変わっただけなんじゃないかな。僕の場合、なによりも大きかったのが、釜本家秘伝の「鶏がらスープ」だった。
 
 いい骨にはいい筋肉が付く。これは間違ないことで、いろんなところでも言われている。中学校に入りたての頃だったかな。父親がけっこうハードな仕事をしていたこともあって、滋養のために自宅で鶏がらスープを作るようになった。僕にも毎日飲めということになって、それからだね、身体つきが変わっていったのは。
 
 業者からもらった鶏の骨をそのまま4時間も煮込んで、骨から出るエキスで真っ白だよ。少し塩を入れて、一日に何回も飲む。冬は熱いまま、夏は冷やして飲んだ。それを高校卒業するまで欠かさず続けた。怪我にも強くて芯が強くなれたのは、あのスープのおかげだったと思う。いまでもラーメンは塩ラーメンしか食べないからね(笑)。
 
 怪我といえば、現役の頃に一度、膝の腱を切ったことがあったんだ。2本あるほうの1本が切れて、手術をしきゃいけないとなった。ただシーズン中だったし、「ちょっとほっといて様子を見ましょうか」となって何日か経ったら、切れてたほうと切れてないほうがくっついて1本になってた。僕もビックリしたけど、お医者さんのほうがもっとビックリしてたね(笑)。
 
 そうとうに珍しかったみたいだけど、「あなたの筋肉は普通やない」と言われたよ。そんで、「ひとりだけあなたと同じ筋肉を持つひとを知ってます。王(貞治氏)さんです」と。太くてしっかりとした骨で、筋肉は柔らかくて強い。
 
 ボールをインパクトするぎりぎりのタイミングでは、タメを作るための土台の強さが問われる。トレーニングをたくさんやれば強い筋肉は付くんだろうけど、しなやかな筋肉は、いい骨がないと付かないんだ。だから成長期にどんな食事をしていたのかは、とても大事なんだと思う。
 
 よくサッカー教室などを通じて、父兄の方々には説明しているんだ。鶏がらスープとまではいかなくても、好き嫌いなく、いろんなものを食べるように言い聞かせてくださいと。で、ハンバーグじゃなくスジ肉を食べさせてほしいと。スジ肉は固い。だから強く噛むようになる。だから奥歯の力が強くなる。踏ん張れるようになる。噛みきって胃が消化して、腸も吸収して、内臓全体も強くなる。
 
 踏ん張れる強さのある選手というのは、顔のエラが張っているんだ。よーく見てほしい。生まれつきの張りじゃないよ。
 
 日本の食文化にも根ざした部分があるのかもしれないし、スジ肉なんて子どもたちは嫌うかもしれない。でも、親御さんが考えて、食べさせてほしいんだ。ご家庭の会計の面でもスジ肉のほうがいいに決まってる(笑)。なかなか実践してもらえないんだけどね。
 
 身長についてはどうにもならないところはあるかもしれないけど、考え方や、口に入れるものひとつで変えられることはあるということ。フィジカルが弱いからどうこうとする前に、やるだけのことはやって強くしたうえで、次になにをすべきかを考えてほしい。僕はそう思うね。

[週刊サッカーダイジェスト2008年12月23日号に掲載]

 心よりご冥福をお祈りいたします。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

PROFILE
かまもと・くにしげ/1944年4月15日生まれ、京都府出身。現役時代はヤンマー(現セレッソ大阪)でプレー、17年間で日本サッカーリーグ(JSL)通算251試合に出場し、202得点をマークした。1968年のメキシコ五輪では得点王に輝くとともに銅メダルを獲得し、日本代表での最多得点記録(75得点/76試合)を持つ。アジア最高のストライカーとしての名声を欲しいままにした。1985年の引退後はガンバ大阪初代監督、日本サッカー協会で副会長など要職を歴任し、参議院議員としても活躍。2005年には日本サッカー殿堂入りを果たした。
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