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【今日の誕生日】3月19日/カルチョの伝統の「最後の継承者」――ネスタ(元イタリア代表)

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年03月19日

自ら栄光を手にするだけでなく、周囲の人々にも影響を及ぼす。

「ゾーンディフェンスの申し子」ともいわれたネスタだが、その能力は対人プレーでも優位性を誇った。 (C) Getty Images

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カンナバーロとのCBコンビは堅守の象徴であり、アズーリにとっての心の拠り所でもあった。 (C) Getty Images

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◇アレッサンドロ・ネスタ:1976年3月19日生まれ イタリア・ローマ出身
 
「カテナッチョ(南京錠)」と呼ばれる堅守によって数々の栄光を築いてきた“アズーリ”ことイタリア代表。マンツーマンに抜群に強い個々が高度な組織で繋がり、水をも漏らさぬ鉄壁の守りを敷き続けてきた。
 
 そんな国でも90年代半ばになるとゾーンディフェンスが主流となったが、ネスタはそんな時代にプロとしてのキャリアをスタートさせた。対人の強さもさることながら、読みの鋭さと判断力の良さは抜きん出ており、そのプレーは優雅さをも漂わせていた。
 
 1985年にラツィオの下部組織に入団し、早くからその才能は注目を集めていた。17歳でトップチームデビューを果たし、年々、その存在感を強めていく。このクラブでの初タイトルは97-98シーズンのコッパ・イタリア。しかもミランの決勝戦、第2レグで決勝ゴールを挙げたのは、ネスタ自身だった。
 
 当時、ラツィオは株式上場によって得た資金でスター軍団化しており、98-99シーズンにはカップウィナーズ・カップ、99-2000シーズンにはスクデットとコッパ・イタリアのダブルも獲得するなど、黄金時代を謳歌することとなった。
 
 しかし、間もなくクラブの資金繰りが悪化すると主力選手が次々に放出され、02年夏にはネスタにその番が回って来た。熱狂的なラツィアーレだった父親同様、彼もこのクラブを愛したが、「ラツィオのため」(本人談)にミラン行きを了承したのである。
 
 赤と黒のユニホームを身に纏ったネスタの存在は、ミランに新たな隆盛の時をもたらした。ここではスクデット(03-04、10-11)、コッパ・イタリア(02-03)だけでなく、チャンピオンズ・リーグを2度(02-03、06-07)制し、07年には日本で世界王者にまで昇り詰めた。
 
 また彼の到来によって守備が盤石なった結果、ファンタジスタのアンドレア・ピルロはアンカーとして新境地を切り拓くことができたし、その起用を敢行したカルロ・アンチェロッティは世界レベルの名将への道を歩むことにもなった。ネスタの及ぼす影響力の大きさは、こういった面にも表われたのである。
 
 そんな彼はもちろん、アズーリでも主力だった。しかし、ここでは怪我に付きまとわれた。しかも、必ずビッグイベントで……。98年フランス・ワールドカップでの負傷は長期の欠場を彼に強い、これが影響してラツィオはわずかな勝点差でスクデットを逃した。
 
 06年ドイツW杯は、イタリアが4度目の世界制覇を果たした忘れられない思い出の大会ではあるが、同時に、グループリーグで怪我を負って優勝の瞬間をピッチ上で迎えられなかったという苦い記憶をも、彼に思い起こさせるのである。
 
 とはいえ、クラブ、代表でほぼ全てのタイトルを獲得するという、これ以上ない栄誉を手にしたネスタに悔いはなく、彼は07年にアズーリ、12年にはセリエAに別れを告げ、以降は北米(MSLのモントリオール・インパクト)、アジア(インドのチェンナイイン)でキャリアを過ごした。
 
 ちなみにチェンナイインで監督を務めたのはマルコ・マテラッツィ。06年W杯でネスタの負傷離脱後にピッチに立ち、以降、貴重なゴール、退場、そしてジネディーヌ・ジダンとの一件などで大いに注目を集めた男だ。彼もある意味、ネスタによって人生を変えられた選手のひとりと言えるかもしれない。
 
 カルロ・パローラ、セルジオ・チェルバート、タルチジオ・ブルニチ、ロベルト・ロザート、フルビオ・コロバティ、クラウディオ・ジェンティーレ、パオロ・マルディーニ、そして共に戦ったファビオ・カンナバーロといった偉大なDFが持つ強さを、ネスタも有していた。
 
 と同時に、アルマンド・ピッキ、ガエタノ・シレア、フランコ・バレージら、歴史に残るリベロの持つサッカーセンスとエレガントさも、ネスタには備わっていた。
 
 現在、イタリア・サッカーはクラブでも代表でも苦戦を強いられているが、その原因のひとつには、相手の攻撃に耐えきれないDFの脆さ、安定感のなさがあるといわれている。堅守を捨て、攻撃に舵を切った結果、カルチョは根を失ってしまったというのだ。
 
 もしそうであるなら、ネスタは伝統の「最後の継承者」と言えるかもしれない。

いかに優れた攻撃陣を誇ろうとも、全ての骨子は守備にあり。それがかつてのイタリアであり、その伝統が数々の栄光をこの国にもたらした。 (C) Getty Images

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資金力の差が原因なのは間違いない。しかし、育成を疎かにした点、そして伝統に背を向けたこともまた、カルチョの衰退に結び付いたといわれている。 (C) Getty Images

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