【柏】悲しき1年での終焉。吉田監督がレイソルに残したもの

カテゴリ:Jリーグ

小田智史(サッカーダイジェスト)

2015年12月30日

「基盤を作る大きな“使命”に、すべてを懸けてきた」

吉田体制は、わずか1年で終焉。「チームを、クラブを、揺るぎないものにしていくために基盤を作る」(吉田監督)ことは、果たしてできたのだろうか。 写真:徳原隆元

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 12月29日の天皇杯・準決勝、延長戦の末に0-1で浦和に敗れ、“吉田レイソル”は終焉を迎えた。
 
 リーグ年間10位(第1ステージ14位/第2ステージ8位)に終わった柏にとって、天皇杯はタイトルの可能性を残す最後の戦いであり、勝ち続ければ今季限りの退任が決まっている吉田監督と2016年元日まで一緒にサッカーができるとチームの一体感が高まっていた。それだけに、指揮官も「負けました。2016年をピッチで迎えられる権利を得られなかったのはとても残念です」と無念さを露わにした。

 今季、柏は「3、4年前から考えていた」(寺坂利之ゼネラルマネージャー)吉田監督誕生を実現させ、「アカデミーからトップチームまで一貫したサッカー」へと大きく舵を切った。自らアクションを起こす攻撃的なスタイル――。それは現在のJリーグでは希少ゆえ、「サッカーの深いところまで知っている監督の下でプレーできるのは、選手としてはすごく幸せなこと」(大津祐樹)、「達磨さんの下、新しいサッカーに触れることができたのは、今後のサッカー人生に活きる」(大谷秀和)と選手たちにとっても新鮮だった。

 勝てない時期、采配に対して懐疑的な声が挙がっても、「自分が耐えればいい」と継続の道を選択。スタイルを確立し、チームとして立ち返る場所を作る。吉田監督はそこにすべてを注力したと振り返る。

「チームを、クラブを、揺るぎないものにしていくために基盤を作る。それが私に課せられた大きな“使命”だと信じて、そこにすべてを懸けてきました」

 そういった信念は、選手起用にも表われていた。第1ステージでは2種登録・特別指定を除き、フィールドプレーヤー全員が出場。3年目の小林祐介やルーキーの中山雄太をACLでスタメンに抜擢するなど、“将来的な投資”として若手にチャンスを与え、経験を積ませた。結果、先述の小林は第2ステージの8試合で先発を務め、3年目の秋野央樹はシーズン終盤にアンカーの定位置を奪取するなど、新たな力の台頭を呼んでいる。

 だからこそ、わずか1年で監督交代に至ってしまったのは残念である。吉田監督の言葉を借りれば、「サッカーを作ることは生易しいことではない」し、ようやく基盤が完成し始めたところで自らそれを手放すのだから。キャプテンの大谷も試合後、「プロの世界なので、結果を残さなければ続けていけないのは承知しているけど」としながら、もどかしい心の内を明かしている。

「チームが長年、達磨さんを監督にするために動いてきて、トップチームからアカデミーまで同じサッカーをやっていくところがようやくでき上がったところで、それを継続できないのはチームとして考えないといけない。なにより選手たちが、結果を出すためにもっとやらなきゃいけないことがあったんじゃないかなと……」

 ただ、プロの世界では「チームに永遠はなく、いつかは終わりや別れが来るもの」(吉田監督)であり、前に進まなければいけない。2016シーズンからはブラジル人監督のミルトン・メンデス氏が新指揮官に就任。エースナンバー9を背負う工藤壮人がアメリカMLSのバンクーバー・ホワイトキャップスへの移籍合意に達したことも発表されている。吉田監督が作った基盤を継承するのか、再び一から基盤を作り直すのか、2016年は柏レイソルにとって大きな転換期になるかもしれない。


取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 

柏での最後の試合となった浦和戦後、吉田監督はサポーターの待つスタンドへと歩み寄り、別れを惜しんだ。 写真:徳原隆元

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