“らしさ”を取り戻せるか。公式戦7試合で1勝と勝利が遠い川崎が抱える課題とは

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2023年03月27日

今季ホーム初勝利はまたもお預け

公式戦7試合で1勝。川崎は苦戦を強いられている。写真:滝川敏之

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 [ルヴァン杯・第2節] 川崎0-0湘南/3月26日/等々力陸上競技場

 世代交代の難しさか。生みの苦しみか。

 覇権奪回を目指す川崎が、苦戦を強いられている。

 リーグ戦は5試合で1勝2分2敗。ルヴァンカップの初戦もアウェーで清水(●2-3)に敗れ、今季ホーム初勝利を目指した第2戦も湘南とスコアレスドローに終わった。

 何よりチームの不調を示していたのは、代名詞とも言えた自陣からのポゼッションだ。湘南が前から積極的にプレスをかけてくるチームであった側面はあるだろう。しかし、相手を見て、味方を見て、各々が臨機応変に中間ポジションに立ち、プレスをあざ笑うかのように、リズミカルにボールを回す姿がどうも見られない。

 この日4-3-3のCFで先発したチームスタイルを熟知する小林悠に話を訊いても、難しい状況であることは感じ取れた。

「映像を見ないと分からないですが、どうしても距離が遠かった。中盤の選手は受けに下がろうとしたが、そうすると相手の矢印が明確になったと思いますし、中盤の選手が下がって受けようとする分、僕との距離が遠くなってしまうので、僕に入る時に周りにサポートがいないから、後ろも蹴りづらかったり、悪循環と言いますか……」

 攻撃の軸である家長昭博の言葉も厳しいものだった。

「言いたいことは一杯ありますが、決められてもおかしくないボールロストが一個だけではなかったと思いますし、手応えはあまりないですかね。どういう意図でパスを回して、どんな結果が生まれるかがあまり見えないのがチームの一番の課題。前にボールが来る回数が圧倒的に減ったし、アタッキングサードでの人数も少ない。いろいろなことを考えながらやっていますが、そこは現実としてあると思います」

 
 不運が重なっている面はある。今オフ、キャプテンの谷口彰悟が海外挑戦を決めたCBでは、車屋紳太郎、ジェジエウ、山村和也と怪我人が続出。中盤の軸を担うべき司令塔の大島僚太も戦線離脱中で、戦線復帰をすでに果たしている左SB登里享平、前述の小林も怪我で出遅れていた。さらに言えば、2021年のリーグMVP&得点王のレアンドロ・ダミアンも練習には戻ったが、まだ実戦には復帰できていない。

 三笘薫、田中碧らを含め、ここ数年、キーマンたちの海外挑戦が続いたうえの苦しい台所事情。後方からのビルドアップは安定せず、鬼木達監督も「相手を引き出した時にそれをプレッシャーと感じるのか、自分たちが引き出していると捉えるのか。もっと全員が全体像を把握しながら、これだけ(相手が)前から来ていたらどこが空いているかとか、そういうものをもうちょっと整理しながら進んでいきたかった」と振り返る。

 今季は右SBの山根視来をビルドアップ時に中盤の底に移動させる可変システムで、再現性の高いシステマチックなボール回しを目指したが、戦い方に意識がいきすぎたせいか、止める・蹴るの技術、球際の迫力という、本来、重視していた真骨頂が出にくくなった部分があった。そのため、改めてトレーニングでパスメニューを取り入れるなど、精度向上を図っている。

 その点ではメンタルも今のパフォーマンスに影響しているのだろう。登里も語っていた。

「自分としては相手が前から来てくれたほうが楽しいし、ボールを動かすタイミングでだいぶ変わります。そこは技術とメンタルの両方が関係していると思います。自信があればボールを動かせるし、今は相手のプレスを受けすぎている印象があります。余裕を持ってボールを動かせばいい場面もあるし、たとえミスしたとしてもカバーして取り返せばいい。相手が前から来たときに数的優位を作って、出口を見つけながらボールを動かすことをもっとやっていきたい」

 小林は大事なのは「話しあうこと、意見を出し合って互いの考えを知ること」と強調する。そして「ゴールが生まれれば、ポジティブな動きや、チャレンジする攻撃ができてくると思う。今日もチャンスがあるなかで決め切れなかったので、そこは自分が決めたかった」と、得点がチームの雰囲気を変える可能性があるとも話す。

 チームは3試合連続無得点と、こちらも“らしく”ない。果たして川崎らしいサッカーを取り戻せるのか。今は自分たちを信じ、技術精度をより意識し、前向きにチャレンジしていくしかないのだろう。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

【厳選ショット】せめぎ合う雨中の激闘。ゴールは遠く0-0のドローに終わる|ルヴァンGS第2節 川崎0-0湘南
  
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