[J１第３節] 川崎１－１湘南／３月４日／等々力陸上競技場

　自分たちのキックオフから、湘南はすかさず川崎陣内に攻め込んだ。タリクや町野修斗、畑大雅が左サイドを巧みに崩せば、大橋祐紀がハイプレスをかけた先で小野瀬康介が相手GKのパスをインターセプトし、折り返しに町野がシュートで応える。

　コンパクトに連動し、高い位置で奪ってショートカウンターを繰り出す一方、例えば大岩一貴と舘幸希、永木亮太がパスを繋いでプレスをはがし、逆サイドを経由してゴールに迫ったように、自陣からの前進も淀みない。なにより、ビルドアップ然り、守から攻への切り替え然り、ゴールへの強い意欲がチームから感じ取れる。

　湘南にとって、得点力向上は今季の最大のテーマだ。昨季終盤、すでに芽吹いていた手応えは、始動からキャンプを経て強められていく。鳥栖との開幕戦で５－１の快勝を収め、続く横浜FC戦でも２－２と複数得点を挙げた事実もまた、彼らの手応えをより確かなものに押し上げていよう。

　攻撃の感触について、アンカーを担う永木亮太は言う。

「シュートやアシストの精度はキャンプから上がってきていると感じています。また全体的に前へ行く気持ちがすごく強いので、ボールが前にこぼれる回数が多く、それをうまくカウンターに繋げられている印象がある。後ろからのビルドアップも去年よりはるかにレベルアップしていると思うし、練習から自然とポジショニングが取れてきている。身体が自然に動けるようになってきたと思います」
 

　互いに主導権を奪い合う展開のなかで、先にスコアを動かしたのは湘南だった。64分、その永木が右サイドでボールを奪い、逆サイドへパスを送ると、受けた平岡大陽はゴール前の混戦のなかで冷静にゴール右隅を捉えた。

　殊勲の平岡が一連を振り返る。

「逆サイドにボールがあるときは意識して入るようにしています。ボールが来たときにいつも焦ってしまうので、あの瞬間は相手のことは見ていなくて、とにかくボールだけを見ていました。ほんとに夢中でやっていた」

　くだんの攻撃が平岡の粘り強いボールキープに端を発していたことも付け加えておきたい。

　その後、昨季まで湘南に所属していた瀬川祐輔に同点ゴールを決められ、勝負は引き分けで決した。追いつかれる展開は前節の横浜FC戦から続いており、見つめるべき点はあろう。ただ、失点にはアンラッキーな側面もあり、試合を通して見てもピンチは限られていた。かたや、得点シーン以外にも思わず腰が浮いてしまうようなチャンスを幾度か作っていたのを鑑みると、前節と同様に、追加点の大切さを改めて思わせる。

　あるとき、山口智監督は語っている。

「自陣でのビルドアップでも、奪った瞬間も、ゴールに向かう意識が濃くなってきたし、積み上げてきたなかで良い関係性も生まれてきた。段階を踏み、それぞれのポジションの考え方を含めて整理ができてきたと思います。でもまだまだやるべきことはあるので、満足せずに取り組みたい」

　確かな手応えを携えつつ、繋がりを磨く彼らの日々は変わらずに続いていく。

取材・文●隈元大吾

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