[高校選手権準決勝] 岡山学芸館（岡山） ３（4PK1）３ 神村学園（鹿児島）／１月７日（土）／国立競技場

　岡山学芸館にとって初の国立競技場のファーストゴールを決めたのは、トップ下の2年生・田口裕真だった。

　開始早々の6分、GKのロングキックからの展開で、中央のFW田邉望（２年）がボールを受けると、田口裕がスルスルっと後方から上がってきた。左サイドのMF岡本温叶（３年）に渡ると、一度は中に行くと見せかけてニアを空けてから、一気に進路を変えてそのスペースに走り込んだ。

　そこに岡本の左足からグラウンダーのクロスが届く。最初はダイレクトで狙ってキックミスをしたが、そのボールが足もとに残ったことを確認すると、すぐさま左足を振り抜いてゴールに突き刺した。

　その後、神村学園のFW福田師王（３年）に同点弾を許すなど、押し込まれる展開となったが、田口裕は頭の中をフル回転させていた。

「相手のボランチ２枚が本当に捕まえられなくて、味方のボランチ（MF山田蒼／３年とMF木村匡吾／３年）と対応をどうするかと試合の中で話し合ったし、福田選手が受けた時にプレスバックをボランチの１枚が必ずしないといけないので、攻撃の枚数が減ってしまう。そうなった時に自分がどうポジションをとって、どういうプレーするのかを考えた」
 

　後半、岡山学芸館の攻守のバランスが良くなった。その中枢にあったのがダブルボランチと田口裕のコンビネーションだった。ボランチの動きに連動して、田口裕が後ろに下がったり、攻め残ってボールを収めてカウンターの起点を作るなど、攻守において効果的な動きを見せた。

　だからこそ、神村学園のMF大迫塁（３年）に直接FKを決められて逆転されても、その3分後には田口裕が左サイドで抜群のボールキープをしたことで、全体が相手陣内に押し上がり、彼のサイドチェンジからの猛攻でエースストライカーのFW今井拓人（３年）が同点弾を奪った。

　69分にCKからCB中江小次郎（３年）に勝ち越しヘッドを叩き込まれても、4分後には高速カウンターから再び同点に追いつく。今井の左からの折り返しをファーサイドで受けた岡本のトラップが内側に入った時、田口裕がスッと中央から裏抜けしたことで、ボールを拾った岡本のシュートコースが空いた。岡本のスーパーゴールの裏には田中裕のスプリントがあった。

　そして３－３の壮絶な打ち合いの末にPK戦での勝利。初の決勝進出を果たした直後のミックスゾーンで田口裕は冷静に試合を振り返った。

「ピッチ内ではなかなか声が通らないので、ハーフタイムで意思疎通できたことが大きかった。個人的には相手が奪いにくるところを遠い足で持ってファールをもらったり、相手の両サイドバックの裏を活用することができました。

　個人のプレーとしても、去年は奪われることが怖くて後ろ向きのトラップが多かったけど、今は前を向いたり、身体を入れて触らずに前を向くようなターンができるようになりました。決勝でも自信を持ってプレーしたいと思います」

　2年生ながら攻撃のリンクマンとして絶大な存在感を放つ田口裕真。決勝でも攻守のバランスを取りながらも、エースストライカー今井拓人の影から飛び出してくるプレーに注目だ。

取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）

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