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日本が“ベスト16の壁”を破るためには? W杯8強に進んだチームとの違いは「システムの枠を凌駕する選手がいるかどうか」 【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2023年01月03日

攻撃のバリエーションが豊かだった

ドイツととスペインを破るも、ベスト16の壁に阻まれた森保ジャパン。(C)Getty Images

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 カタールW杯、森保ジャパンは一括りにすれば、堅守速攻型のサッカーだった。それは一つのプレー様式と言えるだろう。良くも、悪くもない。

 例えばフランス、クロアチア、モロッコ、ブラジル、イングランドなど、ベスト8に進んだほとんどの代表も、堅守速攻型に属していた。「いい守りがいい攻めを作る」という理念であり、ディフェンスは実にソリッドだった。それぞれの選手が持ち場を守る強度は、際立っていた。

 その点、森保ジャパンは同じく定石通りに戦い、一つの結果を叩き出したことになる。ドイツ、スペインにはまさに受け身の戦いがはまった。巨大な歓喜をもたらした。現場で見守って、掛け値なしに美しい景色だった。

 ただ、ベスト8に進んだチームは、状況次第で攻撃にギアを入れることができた。能動的に押し込むことを決めた時、それぞれの選手は卓抜した技術を見せている。相手守備を粉々にするハンマーや切り裂くナイフのような選手も擁していた。戦術システムの枠を超え、自由闊達に攻撃に転じたのである。

 監督が決めたシステムを、凌駕する選手たちがいた。監督も最後のところで、その独創性を選手に求めていたところがあった。その両輪が合わさって、ベスト8に進む強さになっていたのである。

 つまり原則的には堅守速攻であっても、能動型のポゼッションから攻め寄せる形にしろ、キック&ラッシュでセカンドボールを拾って、波状攻撃を仕掛けるにしろ、攻撃のバリエーションが豊かだった。それだけの技術やプレーセンスを備えた選手が起用されていたのだ。
 

 率直に言って、森保監督は5-4-1のフォーメーションに選手をはめ込むのが精いっぱいだった。そのシステムの枠を超えられるような選手よりも、忠実にシステムを運用できる選手だけを選んでいた。それが番狂わせを演出しながらも、格下にあっけなく無様に敗れる、という二つのパターンの波乱を生み出した理由と言えるだろう。

 そしてクロアチア戦は、その二つがブレンドされた「リアルな風景」だった。前半は互角以上に戦い、大会最高の前半45分を戦っている。しかし後半になると交代策も遅く、後ろ向きだったため、徐々にパワーダウンし、PKに持ち込まれてしまい、あえなく敗退したのである。

「新しい風景」
 
 それは再び遠ざかったわけだが、自明の理と言えるかもしれない。「PKで負けた」わけではないだろう。

 ベスト16の壁を超えるには、今回のやり方では十分ではなかったのではないか。
 
 これは結論ではなく、問いかけである。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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