酒井は2ゴールに絡み、西川は2本のPKをストップ
[AC準決勝]浦和2(3PK1)2全北現代/8月25日/埼玉スタジアム2002
「一番チームを引っ張ってきてくれましたし、3点目を取られてもおかしくない場面を止めてくれた。PK戦を含めてそういう感謝の想いもありました」
浦和の4人目のキッカー、江坂任は冷静にネットを揺らし、チームの勝利を決定させると、いの一番にPKを2本セーブした守護神の西川周作のもとへ走る。ふたりは熱い抱擁を交わし、次々とチームメイトたちが飛びつき大きな輪となった。その傍らで酒井宏樹、ユンカーが全北現代の選手たちと健闘を称え合う。
これだけ息を呑むような試合も久々だった。
今シーズンのアジアの東地区チャンピオンを決めるACL準決勝(決勝は西地区王者と来年2月に対戦)。いわゆる“日韓対決”となったゲームは、中2日の両者同士、疲労も蓄積していたはずだが、テンションの高い試合の入りを見せた。
浦和視点で見れば、ホームでの大歓声を背に試合を優位に進めながら、PKで同点に追いつかれ、延長戦の116分に逆転を許すまさかの展開。スタジアムが静寂に包まれた瞬間、敗戦を覚悟した者もいたのかもしれない。
それでも、いつ試合終了のホイッスルが鳴ってもおかしくない120分、相手GKが弾いたところをユンカーが詰めて土壇場で同点としたのだから、観ている者の気持ちは追いつかない。
PK戦の末、埼玉スタジアムでの激闘は浦和に軍配が上がった。
誰もが想いを全面に押し出し、最後まで諦めずに戦った姿はグッとくるものがあった。決定機を決め切れずとも最後の最後に冷静なフィニッシュを見せたユンカーの強心臓ぶりも鳥肌ものだったと言えるだろう。
ただ何よりも心揺さぶられたのは、やはり酒井宏樹と西川周作の姿だ。
「昨年の夏、マルセイユから移籍してきて、当時は誰一人、家族も代理人も含めてこの移籍に賛成する人はいなかった。これが成功だったかどうかは僕自身が証明するしかない。そのためにはこの大会が重要でした」
昨夏、31歳で欧州からJリーグ復帰を果たした酒井は、怪我にも見舞われ、浦和でも代表でも理想通りのパフォーマンスを果たせずにいたように映る。本人のなかでも葛藤があったようだ。
もっとも埼玉で集中開催された今大会のラウンド16から準決勝の3連戦では、これぞ酒井という強度の高いプレーを示し続け、準決勝では10分に先制点をアシストすると、120分のユンカーの劇的なゴールも彼のクロスから始まった。
なにより56分にPKで追いつかれた際には、キャプテンの西川とともに選手たちを集め、叱咤激励し、116分に逆転を許した際に、控え選手やスタッフらとともに喜ぶ全北現代陣営を、早くベンチに戻るよう促し、プレーが再開されると、魂のスライディングでボールを奪って、同点ゴールのクロスへとつなげた。勝利への欲求を人一倍表現し、体現した、まさに“漢”だった。
「一番チームを引っ張ってきてくれましたし、3点目を取られてもおかしくない場面を止めてくれた。PK戦を含めてそういう感謝の想いもありました」
浦和の4人目のキッカー、江坂任は冷静にネットを揺らし、チームの勝利を決定させると、いの一番にPKを2本セーブした守護神の西川周作のもとへ走る。ふたりは熱い抱擁を交わし、次々とチームメイトたちが飛びつき大きな輪となった。その傍らで酒井宏樹、ユンカーが全北現代の選手たちと健闘を称え合う。
これだけ息を呑むような試合も久々だった。
今シーズンのアジアの東地区チャンピオンを決めるACL準決勝(決勝は西地区王者と来年2月に対戦)。いわゆる“日韓対決”となったゲームは、中2日の両者同士、疲労も蓄積していたはずだが、テンションの高い試合の入りを見せた。
浦和視点で見れば、ホームでの大歓声を背に試合を優位に進めながら、PKで同点に追いつかれ、延長戦の116分に逆転を許すまさかの展開。スタジアムが静寂に包まれた瞬間、敗戦を覚悟した者もいたのかもしれない。
それでも、いつ試合終了のホイッスルが鳴ってもおかしくない120分、相手GKが弾いたところをユンカーが詰めて土壇場で同点としたのだから、観ている者の気持ちは追いつかない。
PK戦の末、埼玉スタジアムでの激闘は浦和に軍配が上がった。
誰もが想いを全面に押し出し、最後まで諦めずに戦った姿はグッとくるものがあった。決定機を決め切れずとも最後の最後に冷静なフィニッシュを見せたユンカーの強心臓ぶりも鳥肌ものだったと言えるだろう。
ただ何よりも心揺さぶられたのは、やはり酒井宏樹と西川周作の姿だ。
「昨年の夏、マルセイユから移籍してきて、当時は誰一人、家族も代理人も含めてこの移籍に賛成する人はいなかった。これが成功だったかどうかは僕自身が証明するしかない。そのためにはこの大会が重要でした」
昨夏、31歳で欧州からJリーグ復帰を果たした酒井は、怪我にも見舞われ、浦和でも代表でも理想通りのパフォーマンスを果たせずにいたように映る。本人のなかでも葛藤があったようだ。
もっとも埼玉で集中開催された今大会のラウンド16から準決勝の3連戦では、これぞ酒井という強度の高いプレーを示し続け、準決勝では10分に先制点をアシストすると、120分のユンカーの劇的なゴールも彼のクロスから始まった。
なにより56分にPKで追いつかれた際には、キャプテンの西川とともに選手たちを集め、叱咤激励し、116分に逆転を許した際に、控え選手やスタッフらとともに喜ぶ全北現代陣営を、早くベンチに戻るよう促し、プレーが再開されると、魂のスライディングでボールを奪って、同点ゴールのクロスへとつなげた。勝利への欲求を人一倍表現し、体現した、まさに“漢”だった。
守護神の西川のPK戦での躍動ぶりも称賛ものだった。経験豊富なキャプテンは緊張で少しは固さが生じてしまうような場面で、柔和な表情を浮かべ、相手を自分のゾーンへと引き込む。
1、2本目の連続セーブはまさに圧巻で、経験、読み、鋭さ、セービング能力、どれをとってもまさに一級品だった。
全北現代の4人目のキッカー、キム・ジンスがポストにシュートを当ててしまったのも、この男が放つ威圧感なしには語れないだろう。
何より準決勝ではPKを含め2点を失ったものの、今季就任したミッレGKコーチのもとで35歳を過ぎても成長を続ける守護神は、安定したセービングでラウンド16と準々決勝をクリーンシートで抑えている。
なおかつ得意の高精度フィードは冴えわたり、カウンターの起点になるのだから貢献度は抜群である。
ふたりの存在こそ、浦和の今の幹となっていると言えるのだろう。ユンカーのゴールとともにふたりの雄姿は、浦和サポーターの間で語り継がれるはずだ。
一方で3試合連続で延長戦を戦ったなかで、浦和を一度は逆転する全北現代の粘り強さも特筆ものだった。彼らの熱いパフォーマンスがあってこその激闘だ。理想を言えば本来のホーム&アウェー方式で両者の戦いを見たかったが、それは来年にお預けか。サポーターの大声援を含めて、サッカーの魅力が再び戻ってきたと強く感じられるゲームでもあった。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
【ACL準決勝PHOTO】浦和2(3PK1)2全北現代|西川が止めた!PK戦に縺れる大激戦を制して決勝進出!
【PHOTO】埼スタを真っ赤に染め上げる!選手を力強く後押しする浦和レッズサポーター!
1、2本目の連続セーブはまさに圧巻で、経験、読み、鋭さ、セービング能力、どれをとってもまさに一級品だった。
全北現代の4人目のキッカー、キム・ジンスがポストにシュートを当ててしまったのも、この男が放つ威圧感なしには語れないだろう。
何より準決勝ではPKを含め2点を失ったものの、今季就任したミッレGKコーチのもとで35歳を過ぎても成長を続ける守護神は、安定したセービングでラウンド16と準々決勝をクリーンシートで抑えている。
なおかつ得意の高精度フィードは冴えわたり、カウンターの起点になるのだから貢献度は抜群である。
ふたりの存在こそ、浦和の今の幹となっていると言えるのだろう。ユンカーのゴールとともにふたりの雄姿は、浦和サポーターの間で語り継がれるはずだ。
一方で3試合連続で延長戦を戦ったなかで、浦和を一度は逆転する全北現代の粘り強さも特筆ものだった。彼らの熱いパフォーマンスがあってこその激闘だ。理想を言えば本来のホーム&アウェー方式で両者の戦いを見たかったが、それは来年にお預けか。サポーターの大声援を含めて、サッカーの魅力が再び戻ってきたと強く感じられるゲームでもあった。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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