ともにリスクを冒してまで攻めることなく、PK戦での決着へ。

勝負弱さを露呈してきた過去の大会とは違い、自信と粘りを持って難敵を退けたスペイン。これで、栄光に向けて視界は一気に開けた。 (C) Getty Images

本文では紹介していないが、96年にはイングランドが現在に至るまで唯一となる、メジャー大会でのPK戦勝利を挙げた。相手はスペインであり、フェルナンド・イエロ、ミゲル・アンヘル・ナダル(写真)という守備の要が揃って外した。 (C) Getty Images
EURO2008でスペインは、順調な歩みを見せていた。
グループリーグ初戦でロシアを4-1で撃破し、スウェーデン、ギリシャにいずれも2-1で勝利して、首位で準々決勝に駒を進めた。
シャビ、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバの「クアトロ・フゴーネス(4人の創造者)」によって華麗なパスを展開し、マルコス・セナが中盤の守備者として獅子奮迅の活躍を披露したスペインは、いよいよ本当に「無敵艦隊」となると期待されていた。
一方、2年前のワールドカップ王者、イタリアは、オランダに0-3と大敗する最悪の出だし。その後、ルーマニアに引き分けてピンチに陥るも、イタリア以上に不調のフランスに最終戦で2-0の勝利を挙げ、2位で何とか決勝トーナメントに勝ち上がってきた。
昇り調子のスペインと、過渡期を迎えつつあったイタリアが対峙したのが6月22日。場所は、オーストリア・ウィーンのエルンスト・ハッペル・シュタディオンだった。
主導権を握ったのは、ポゼッションサッカーのスペイン。これに対し、司令塔のアンドレア・ピルロを出場停止で欠いたことにより、より守備的な姿勢をとったイタリアがゴール前に壁を作り、決定的な場面を作らせない。
時間の経過とともに、1点勝負の様相が強くなるなかで、互いにリスクを冒してまで攻撃に人数をかけることはなく、セットプレーに活路を見出そうとするも、ここでも決定打は出ない。
この流れは延長戦でも続き、ついに決着はPK戦に持ち込まれることとなった。
無失点でしのいでPK戦に“持ち込んだ”かたちのイタリアの方が、精神的には有利かと思われたが、先に外したのは彼ら。2人目のダニエレ・デ・ロッシのキックが、GKイケル・カシージャスに止められる。
一方のイタリアは、守護神ジャンルイジ・ブッフォンが、スペインの4人目のダニエル・グイサのゴールを阻む。しかしその直後、アントニオ・ディ・ナターレが、カシージャスの好セーブに遭い、頭を抱え込んだ。
スペインは最終キッカーのセスクがブッフォンの逆を突いてウイニングゴールを決め、世界王者を退けて準決勝進出を果たした。
最も苦手とするタイプの相手に競り勝ったことは、スペインにとって大きな自信となり、その後の戦いに向けて弾みをつけたことは間違いない。
その意味でこの一戦は、この大会から黄金時代に突入するスペインにとって、またサッカーの歴史においても、大きな分岐点となったと言えよう。
その後、両者はEURO2012で2度対戦し、グループステージではイタリアのペースで引き分け、決勝ではスペインが4-0の大勝で連覇を果たした。
そして今回、ラウンド16でまたもこのカードが実現した。イタリアが雪辱を果たすか、スペインが三たび返り討ちにするのか――。同ラウンドではこの対決が、最大の注目を集めることになるだろう。
◎6月22日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1988年西ドイツ大会
準決勝
ソ連 2-0 イタリア
◇1992年スウェーデン大会
準決勝
デンマーク 2(5PK4)2 オランダ
◇1996年イングランド大会
準々決勝
イングランド 0(4PK2)0 スペイン
フランス 0(5PK4)0 オランダ
◇2004年ポルトガル大会
グループステージ
イタリア 2-1 ブルガリア
デンマーク 2-2 スウェーデン
◇2008年オーストリア・スイス大会
準々決勝
スペイン 0(4PK2)0 イタリア
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
準々決勝
ドイツ 4-2 ギリシャ
※日付は全て現地時間
グループリーグ初戦でロシアを4-1で撃破し、スウェーデン、ギリシャにいずれも2-1で勝利して、首位で準々決勝に駒を進めた。
シャビ、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバの「クアトロ・フゴーネス(4人の創造者)」によって華麗なパスを展開し、マルコス・セナが中盤の守備者として獅子奮迅の活躍を披露したスペインは、いよいよ本当に「無敵艦隊」となると期待されていた。
一方、2年前のワールドカップ王者、イタリアは、オランダに0-3と大敗する最悪の出だし。その後、ルーマニアに引き分けてピンチに陥るも、イタリア以上に不調のフランスに最終戦で2-0の勝利を挙げ、2位で何とか決勝トーナメントに勝ち上がってきた。
昇り調子のスペインと、過渡期を迎えつつあったイタリアが対峙したのが6月22日。場所は、オーストリア・ウィーンのエルンスト・ハッペル・シュタディオンだった。
主導権を握ったのは、ポゼッションサッカーのスペイン。これに対し、司令塔のアンドレア・ピルロを出場停止で欠いたことにより、より守備的な姿勢をとったイタリアがゴール前に壁を作り、決定的な場面を作らせない。
時間の経過とともに、1点勝負の様相が強くなるなかで、互いにリスクを冒してまで攻撃に人数をかけることはなく、セットプレーに活路を見出そうとするも、ここでも決定打は出ない。
この流れは延長戦でも続き、ついに決着はPK戦に持ち込まれることとなった。
無失点でしのいでPK戦に“持ち込んだ”かたちのイタリアの方が、精神的には有利かと思われたが、先に外したのは彼ら。2人目のダニエレ・デ・ロッシのキックが、GKイケル・カシージャスに止められる。
一方のイタリアは、守護神ジャンルイジ・ブッフォンが、スペインの4人目のダニエル・グイサのゴールを阻む。しかしその直後、アントニオ・ディ・ナターレが、カシージャスの好セーブに遭い、頭を抱え込んだ。
スペインは最終キッカーのセスクがブッフォンの逆を突いてウイニングゴールを決め、世界王者を退けて準決勝進出を果たした。
最も苦手とするタイプの相手に競り勝ったことは、スペインにとって大きな自信となり、その後の戦いに向けて弾みをつけたことは間違いない。
その意味でこの一戦は、この大会から黄金時代に突入するスペインにとって、またサッカーの歴史においても、大きな分岐点となったと言えよう。
その後、両者はEURO2012で2度対戦し、グループステージではイタリアのペースで引き分け、決勝ではスペインが4-0の大勝で連覇を果たした。
そして今回、ラウンド16でまたもこのカードが実現した。イタリアが雪辱を果たすか、スペインが三たび返り討ちにするのか――。同ラウンドではこの対決が、最大の注目を集めることになるだろう。
◎6月22日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1988年西ドイツ大会
準決勝
ソ連 2-0 イタリア
◇1992年スウェーデン大会
準決勝
デンマーク 2(5PK4)2 オランダ
◇1996年イングランド大会
準々決勝
イングランド 0(4PK2)0 スペイン
フランス 0(5PK4)0 オランダ
◇2004年ポルトガル大会
グループステージ
イタリア 2-1 ブルガリア
デンマーク 2-2 スウェーデン
◇2008年オーストリア・スイス大会
準々決勝
スペイン 0(4PK2)0 イタリア
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
準々決勝
ドイツ 4-2 ギリシャ
※日付は全て現地時間

同じく本文では紹介していないが、イタリアは04年大会でブルガリアに勝利。しかし、デンマークとスウェーデンが2-2で引き分けたことで、グループステージ敗退が決定した。戦前、北欧2国のあいだに“談合”の噂が飛び交い、イタリアとデンマークの監督同士が舌戦を繰り広げたりもしたが、噂通りの結末にイタリアは怒りをあらわにした。 (C) Getty Images