独走でセリエAを２連覇した昨シーズン以上のハイペースで首位をひた走るユベントスの無敵ぶりには、理由がある。大きなプラスアルファをもたらしたのが、カルロス・テベスとフェルナンド・ジョレンテの新戦力２人が組む新２トップと、ポール・ポグバの進化だ。

2012年７月、マンチェスター・ユナイテッドとの契約更新を拒否してユーベに移籍したフランスの逸材は、アントニオ・コンテ監督の指導の下で着実に成長。アンドレア・ピルロ、アルトゥール・ビダル、クラウディオ・マルキージオとワールドクラスが揃う中盤で、バックアッパーながら地歩を固めた。この経験を土台に、今シーズンはさらなる飛躍を遂げ、スタメンの一角を完全に確保したのである。

　フランスを世界一に導き、ゴールデンボール（大会MVP）に輝いたU-20ワールドカップが、まさに吉兆だった。チームに戻ると、マルキージオが膝の靭帯損傷で長期の戦線離脱。変わりに先発起用されたサンプドリアとの開幕戦で、決勝ゴールをアシストしたポグバは、その後もコンスタントに質の高いパフォーマンスを披露する。復帰したマルキージオをそのままサイドラインに追いやって、左インサイドハーフのレギュラーの座を手中に収めたのである。

　186センチ・80キロという均整のとれたボディーに、卓越したフィジカル能力とパワーを装備する。ボール奪取能力が高く、エネルギッシュに守備をこなすが、決して力任せのボランチではなはない。中盤の全ポジションに対応し、ピルロの代役としてアンカーをこなす。

　持ち味がもっとも発揮されるのは、前を向いて攻撃を仕掛けた時だ。フィジカルを利したタフなプレスでボールを奪取した後、ストライドの長いドリブル突破でゴール前まで一気にボールを運ぶ。長身ながらボールタッチは繊細で、裏のスペースに抜ける味方にスルーパスを送ったり、あるいは逆サイドに振ったりと、プレーの引き出しは豊富、かつプレー選択に間違いがない。エリアの手前でマーカーを外して撃ち込む、強烈なミドルも十八番だ。フォアプレスでボールをかっさらい、素早い切り替えからの速攻を信条とするユーベにとって、ポグバは欠かせない戦術上のキーマン。そういっても過言ではない。

　ユーベでの活躍ぶりはもとより、移籍市場での動向がすでに大きな注目を集めているのは、代理人があのミーノ・ライオラだからでもある。同じく顧客にするズラタン・イブラヒモビッチを“転売”して巨額の富を生み出した手腕家は、

「ポグバの価値はガレス・ベイル（史上最高額の120億円相当で昨夏、トッテナムからレアル・マドリーへ移籍）の２倍、モネの絵画と同等だ」

　そう言って市場を煽る。これに反応してパリSGが巨額のオファーでユーベに迫ったが、7000万ユーロ（約98億円）超とも伝えられるその提示は撥ねつけたれたようだ。ピッチの中でも外でも、この20歳の俊英から目が離せない。