【連載】蹴球百景 vol.25「ワールドカップを前にした至福と危機感」

カテゴリ:連載・コラム

宇都宮徹壱

2017年09月24日

本大会のシミュレーションが楽しめるのは出場国の特権だ。

来年のワールドカップが開催されるロシア。今後は組合せ抽選など楽しみなイベントが盛り沢山だ。写真:宇都宮徹壱(Sanktpeterburg. 2017)

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 9月の国際Aマッチデーが終わり、日常のフットボールが戻ってきた。とはいえ、日本のワールドカップ出場が決まったことで、そろそろ来年の6月に向けてあれこれ想像を巡らせたくもなる。「4番目の出場決定国」となった日本は、10月の国内での親善試合(ニュージーランドとハイチ)に続いて、11月の欧州遠征ではベルギー、ブラジル、フランスらが対戦候補となっていることが報じられた。
 
 12月1日には、モスクワで組合わせ抽選会が行なわれる。報道によれば、今回は今年10月のFIFAランキングをもとにポッド分けが行なわれ、上位7か国と開催国ロシアが第1ポッド。以下、8か国ごとに第2、第3、第4ポッドに振り分けられる。前回大会は大陸ごとにポッド分けが行なわれていたが、今回はランキングが最優先となるため、現在40位の日本は第4ポッドに入るだろう。オセアニアや北中米の中堅国も同じポッドに入るから、日本と同組になるのは格上ばかりになるのは必定。それでも対戦相手が決まれば、さまざまなシミュレーションが楽しめるのもまた出場国の特権である。
 
 グループ分けが決まれば、自ずと日本戦の開催地も決まる。今年6月のコンフェデレーションズカップを取材した際、開催4都市を回ってみた。個人的な印象を述べるなら、「何かと便利なモスクワ」「エキゾチックなカザン」「退屈なソチ」「見どころが多いサンクトペテルブルク」となろうか。ソチ以外のどれかひとつは、日本戦の会場になってほしいところ。また、最も東に位置するエカテリンブルクやヴォルガ川とオカ川が合流するニジニ・ノヴゴロドあたりも個人的には惹かれている。日本代表のキャンプ地も、この頃には決まるだろう。
 
 ワールドカップ予選突破を決めたこの時期というのは、フットボールファンにとっては4年に一度の至福といえる。しかしそれは、サッカーを日常的に楽しむだけの平安があればこその話だ。テロや難民問題のリスクについて、我々日本人は深刻に受け止めつつも、どこか「遠い国の出来事」と捉えていた。ところが最近になって、実はすぐ身近に戦争への危機が迫っていることを、我々は身をもって実感する日々が続いている。日本海の向こう側には、国際世論などどこ吹く風の好戦的な独裁者。そして太平洋の向こう側には、予測不可能な言動で世界中をハラハラさせる大統領。何が起こっても不思議ではない。
 
 ワールドカップは、第2次世界大戦による12年間の中断期間を経て、1950年大会から2014年大会までは途切れることなく開催されている。その間も局地的な戦争は続いていたし、開催国の治安や運営能力が不安視されたこともあった。それでも、曲がりなりにもワールドカップが続けられたのは「人類の叡智のおかげ」というよりも、出来すぎた奇跡のようにさえ思える。果たして私たちは、来年のワールドカップを当たり前のように楽しむことができるのだろうか。そんなことを考えながら、日々のニュースに接している。
 

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