【安永聡太郎】久保建英がビジャレアルで求められる役割は?「過去の日本人が経験したことのない…」

2020年08月23日 木之下潤

移籍先としては良い選択だが、厳しい戦いが待っている

数あるオファーの中からビジャレアル移籍を選択した久保。(C) Getty Images

 久保建英の"ベストな移籍先"を考えた時、ビジャレアルはぎりぎり選択肢の中に入る。

 個人的にベストはレバンテだったんだけどね。理由は2つ。監督が戦術向上のためにほしがっていたことと、同タイプの選手がいなかったこと。国内の試合しかないけど、マジョルカより一つ上のレベルの選手とホーム&アウェーで戦い方を変えながらボール保持を志向する監督の下で、年間38試合に集中できただろうから。要するに、試合も学ぶための練習になるということ。

 レバンテはリーグ中位だけど、久保が自らの変化・成長をチームにもたらすことができればヨーロッパリーグ(EL)を狙えるくらいの躍進はできる。久保はそれくらいのチームに加わるのがベストだったんじゃないかな。まぁ、去年12月にパコ・ロペス監督と話をしたときに「久保がほしい」と熱望していたのが大きいけどね。

 ズルい言い方だけど、「ベスト」に幅があるなら最上位クラスに位置するのがビジャレアルだと思う。最上位というのは競い合うレベルの高さで、「現在の久保がぎりぎり試合に出続ける」勝負ができるという意味。不安と期待が入り混じっている。
 
 ビジャレアルは毎シーズン安定してリーグ8位以内に入る好チーム。昨シーズンまでプレーしていたブルーノ・ソリアーノ、サンティ・カソルラという偉大なレジェンドが退団して、久保に求められるものはハッキリしてる。カソルラが生んでいたチームへの「間」を高い位置で作ることだ。

 だけど、右サイドには爆発的なスピードがあって、同じ左利きでもあるサムエル・チュクウェゼがいるからね。まず、この選手とのレギュラー争いがある。昨シーズンは4-4-2や4-3-3が多かったけど、前線にはパコ・アルカセルやスペイン人得点王になったジェラール・モレーノが入っていた。

 新シーズンから指揮を執るウナイ・エメリ監督は4-2-3-1の縦関係が好きの印象があるから、久保にトップ下を望むなら彼らとも競うことになる。

 エメリは戦術研究者というより戦術勝負師だ。

 ロマンより勝負を追求するし、現実的に「この相手にはこの戦い方がベストだよね」と信じ切れる監督で、ここに先入観は一切ない。セビージャ時代にはトップ下にボランチのイボーラ(現ビジャレアル)を起用したりするなど、前線への飛び出しが得意なら「一列前ならどうなる?」ということを平気で試せるメンタリティーを持っている。選手の個性を生かすのも得意でバネガやゲンドゥジのような"イケイケな性格"な選手も上手に扱っていた。

 基本的にメインキャストとなる選手は変更することはない。その選手たちを軸に、現実的に選手をはめ込んでいくタイプの監督だから、メイングループから外れると戦術が合致した場合にしか使ってもらえない。

 久保はまずメインキャストのグループに入ることが試合に出続ける第一歩だろうね。

 サブキャストのグループ、そうでもないグループに入ると出場チャンスは激減する。ビジャレアルの選手の質は高いけど、昨シーズンのマジョルカのパフォーマンを見れば期待したいよね。ただ予想以上にハードなシーズンになることは間違いないし、過去にスペインでプレーした日本人選手が経験したことのない競争が待っている。
 

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