マドリードダービーに完敗 順風満帆に見えたレアル・マドリーの死角はどこにあるのか

2015年02月09日 ロベルト・ロッシ

極めて完成度の高い「全方位型」チーム。

アトレティコに完敗を喫したレアル・マドリー。CL王者の死角はどこにあるのか。 (C) Getty Images

 宿敵アトレティコ・マドリーとのマドリードダービー(リーガ・エスパニョーラ22節)で、レアル・マドリーが0-4の完敗を喫した。
 
 マドリーの死角はどこにあるのか――。
 
 連覇を狙うチャンピオンズ・リーグの再開(ラウンド・オブ16は2月17日にスタート。マドリーは18日にシャルケと第1レグを戦う)を前に、王者マドリーを改めて戦術的に考察した。
 
※ワールドサッカーダイジェスト2015年2月19日号より抜粋。
 
――◆――◆――
 
 死角を炙り出すために、まずはレアル・マドリーというチームのプロフィールを総合的に分析していこう。
 
 カルロ・アンチェロッティ監督が率いる現在のマドリーの戦術的な特徴を一言で言えば、「ポゼッション志向でもカウンター志向でもない、バランス型のチーム」と定義できる。
 
 バルセロナやバイエルンのようにポゼッションに特化しているが、ボールを持っていない時には明らかな弱点があるというタイプではないし、ボルシア・ドルトムントのようにプレッシングからのカウンターは抜群の切れ味を持つが、ボールを持たされると並のチームに成り下がるわけでもない。
 
 ポゼッションで主導権を握って試合をコントロールできるうえ、受けに回ってカウンターを狙う戦い方もできるが、そのどちらかを徹底して追求するのではなく、相手と状況に応じて適切に両者を使い分けながら戦える――。そんな極めて完成度の高いチームに仕上がっている。
 
 ポゼッションとカウンター、そして攻撃と守備の両局面、そのいずれも高いレベルで遂行して同じように機能させるという点では、「全方位型」もしくは「万能型」と言い換えてもいいだろう。
 
 もちろんマドリーには、常に世界の頂点を目指すトップクラブとしてのプライドがある。したがって、可能な限り自ら主導権を握って試合を進めるという王者に相応しい戦い方を目指すのは当然であり、またその圧倒的な戦力ゆえにほとんどの試合において相手は受けに回る戦い方を選ぶため、いずれにしても自らボールを支配して戦う試合が大半だ。
 
 チームビルディングからも、プライドがうかがえる。ワールドクラスのクオリティを備えた攻撃的なタレントを可能なかぎり多くピッチに送り出し、そのうえでチームとしてのバランスを最大限に追求するというアプローチが取られている。
 
 それを象徴しているのが、中盤の構成だ。基本システムである4-3-3のアンカーに、トップ下としても十分通用する攻撃センスを備えたトニ・クロースを置き、インサイドハーフにもルカ・モドリッチ(編集部・注/ハムストリングの故障で3月中~下旬まで欠場見込み)、ハメス・ロドリゲス(編集部・注/右足甲の骨折で4月上旬まで欠場見込み)、あるいはイスコというテクニカルな攻撃のタレントを並べている。4人とも、他のクラブなら10番を背負って絶対的な攻撃の中心となりうるレベルのワールドクラスだ。
 
 その一方、安定した守備力を持つが、攻撃面のクオリティでは彼らに明らかに見劣りするアシエル・イジャラメンディは、ここまで出場機会が非常に限られている。
 
 サミ・ケディラはテクニックという点ではモドリッチやイスコに見劣りするものの、ダイナミズムとタイミングの良い攻め上がりで攻撃にバリエーションをもたらし、守備の局面では圧倒的なフィジカル能力を利したボールハントで貢献する万能型MF。試合を重ねてコンディションが上がれば、シーズン後半は貴重な戦力になるだろう。

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