【検証】イタリアはなぜ世界王者から予選敗退まで凋落した? 前編:無策すぎたプレーオフ

2017年11月16日 片野道郎

わずか12年前は世界の頂点に立っていたが…。

予選敗退で涙にくれるブッフォン。代表キャリア最終戦はまさかの幕切れとなった。写真:Alberto LINGRIA

 イタリアがワールドカップ出場を逃したのは、1958年スウェーデン大会以来、実に60年ぶり。つい12年前は2006年ドイツ大会を制して世界の頂点に立っていたことを考えると、信じられない凋落である。
 
 しかしもちろん、敗退するからにはそれなりの理由がある。偶然や不運のせいにするわけにいかないことは明らかだ。以下、いくつかの角度から敗退の原因を整理しておこう。
 
 最も直接的な敗因は、スウェーデンとのプレーオフ2試合で1ゴールも挙げられなかったことだ。第1レグが64%、第2レグが75%というボール支配率が示すように、イタリアは2試合を通してほぼ一方的に主導権を握り、攻勢に立って戦った。しかし、その攻撃のボリュームと比較して、肝心な最後の30メートルで作り出した質の高い決定機の数は、あまりにも少なかった。
 
 本当に危険な決定機は、第1レグの立ち上がりにアンドレア・ベロッティが放ったヘディングシュートと、ポストを叩いたマッテオ・ダルミアンのミドルシュート、そして第2レグの前半終了間際にジョルジーニョのスルーパスからチーロ・インモービレが裏に抜け出して放ったシュートくらい。記録上は第1レグが10本、第2レグが26本のシュートを放っているが、その大部分は敵DFラインの手前や角度のないところから強引に打ったもので、スウェーデンの守備を崩す場面はほとんど見られないままに終わった。
   
 スウェーデンの戦い方は極めてシンプルで分かりやすいものだった。コンパクトによく組織された4-4-2のブロックを自陣の深い位置に構築して最も危険な中央のスペースを潰し、高さと強さを武器にイタリアの攻撃をはね返して、奪ったボールは前線に放り込むという「モダンなカテナッチョ」を徹底的に遂行したのだ。ヨーロッパでよく使われる言い方をすれば、「ゴール前にバスを停める」というやり方である。
 
 ところがイタリアがやったのは、そのスウェーデンに対して、サイドからクロスの雨を降らせて、ゴール前で待ち受ける屈強な大型DFにはね返されるというループを延々と繰り返すことだけだった。スウェーデンがそういう戦い方しかできないことが分かっていながら、それを打ち破る対策を用意するどころか、自ら相手の注文通りの戦い方を選んでその術中にはまったのだから、敗れるべくして敗れたとしか言いようがない。
 

次ページ戦術とタスクが実効性を欠けば選手ができることは限られる。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事