【浦和】地獄と天国を2往復。証言から紐解く「ソウルショック」の敗因と収穫

2016年05月27日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

「勝てば天国、負ければ地獄。まさにその通りだった」

「ボールは収まったけれども、崩し切れなかった」。興梠はプレッシングも怠らず、試合終盤には内転筋がつってしまった。写真:徳原隆元

「どう言葉で表現したらいいのか分からない」

 FCソウル-浦和戦の試合直後、まだ顔を赤らめ高揚するズラタンはそう言った。おそらくソウルワールドカップ競技場にいた多くの人が、そのような想いを抱いていた。
 
 延長前半に2試合トータル1-2とされる逆転ゴールを叩き込まれる。しかし同後半に李が2ゴールを決めて、3-2と大逆転に成功。ところが同15+2分の土壇場に再び3-3の同点に……。さらにPK戦でもあと1本決めれば勝てていたが、そこから"逆転"されてしまった。
 
 揺れ動く心理、駆け引き、そして勝敗を分けた分岐点――。死闘のあとに振り絞るように放たれた選手たちの言葉には、どれも重みがあった。
 
 2016年5月25日、浦和が打ちのめされた「ソウルショック」。痺れる120分+PK戦
の攻防の舞台裏で、いったいなにが起きていたのか。浦和の選手と両チームの監督の証言を基に検証した。
 
――・――・――・――・――・
 
「勝つか負けるか、その差があまりにもはっきりしている。勝てば天国、負ければ地獄。まさにその通りですね」
 
 シャドーで先発した武藤は自問自答し、気持ちを整理するように話した。
 
「後半はウチの時間帯が長かった。あと一歩だった。だから悔しいですよ。ただ、相手も強かった。勝ち上がったFCソウルを讃えたいです」
 
 延長前半4分にFCソウルのアドリアーノにゴールを決められ、この試合のスコアを0-2とされる。この時点で、18日の埼玉スタジアムでの第1戦(浦和が1-0で勝利)とのトータルスコアが1-2と、ついに逆転される。
 
 浦和に訪れた最初の「地獄」だった。
 
 選手たちは追い込まれた。それでも、試合開始からのスタンスは基本的に変わらなかった。
 
 ゴールを奪えばいい――。1ゴールを決めさえすれば、再びタイスコアに持ち込めるのだ(90分間はアウェーゴールルールを採用。延長戦は同ルールはなし)。
 
 しかも、チャンスは時間が経過するごとに増えていた。李もこのままでは終わらない予感がしていたと言う。
 
「(ゴールの)可能性は常にあったし、自分も信じていた。時間が経つにつれて、スペースもできていた」
 
 

次ページ2ゴールの李は「いける手応えはあった。驚くことではない。むしろ遅すぎた」。

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