新潟内定レフティCB稲村隼翔の改心。モチベ低下、勘違い、弱い自分。成長を促した2つのターニングポイント

2023年09月02日 安藤隆人

冷静な自己分析と純粋な思い

25年の新潟加入が決まっている稲村。大学サッカー界屈指のCBだ。写真:安藤隆人

 182センチのサイズで左利きのCB。東洋大3年の期待の逸材である稲村隼翔は、今年の6月1日に2025年シーズンからのアルビレックス新潟加入内定が発表された。この発表から2か月後、彼のインタビューを行なった。

「僕の中で千葉和彦さんの存在が大きかった。本当にチームを第一に考えていることを初日から感じられたんです。練習の前からチームを盛り上げるための言動をしていて、笑わせたり、引き締めたりするんです。

 チームを勝たせられる力というか、まとめたり、盛り上げたりする力という僕に足りないものを持っている人でした。プレー面でも、左CBで僕とまったく同じポジションにもかかわらず、細かいアドバイスをしてくれました。

 細かいボールタッチから相手の矢印を常に折り続けるプレーなど、自分が課題に捉えていて、言語化できない部分を細かく教えてもらった。ボールの持ち方、相手の外し方、パスの出し方。僕にとって学びしかない方だなと思いました」

 稲村は落ち着いた口調で新潟に決めた理由をこう述べる一方で、まだ大学3年の6月という早い段階でプロ入りを決めたことに対しては、簡単な決断ではなかったと口にした。

「どうしても早く(内定を)決めてしまうと、周りの対応もガラリと変わって鼻が伸びてしまう選手がいる、上手くいかなくなる選手もいると東洋大の井上卓也監督をはじめ、いろいろな人に言われていたので、そこで一番悩みました」
 
 彼が言うように、早く内定を決めることで、変な安心感を持ってしまう危険性もあるし、周りが『J内定選手』ということで遠慮するようになったり、持ち上げられたりすることで、天狗になってしまう危険性もある。同時に自分が加入する時に体制が変わってしまっているなどのリスクも内在する。

「僕の過去を見ても、そうなってしまう危険性はあると自分でも思います。中学や高校時代にお世話になった指導者の人たちに相談した時も、『お前は感情の起伏がある性格だから、そこはしっかり考えたほうがいい』、『浮き沈みがあるのが隼翔の課題だから、そこはちゃんと考えたほうがいい』と言われました。

 なので、アルビレックスさんともう1つのクラブから同時にオファーをいただいてから、1か月間はじっくりと悩みながら考え抜きました」

 冷静な自己分析と純粋な思いを照らし合わせた結果、決断を下した。この過程には稲村のこれまでのサッカー人生が大きく影響しているという。「高校と大学で大きなターニングポイントを迎えることができた」と語る真相は何か。今回、1時間半に渡るインタビューをもとに稲村隼翔という1人の選手について描いていきたい。

【PHOTO】新たな歴史を刻むべく、魂の声援を送り続けたアルビレックス新潟サポーター!

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