“リアル”南葛SCの女子&Jr.ユースチームが体現するクラブのフィロソフィーとは?

2021年09月30日 伊藤 亮

東東京で地域リーグを戦える貴重な女子クラブチーム

南葛SC WINGSを率いる尾亦監督。FC東京ファンには忘れ得ない顔だろう。写真:田中研治

「普及」を目的に立ち上げられた南葛SCの女子チームとジュニアユースチーム。

 女子チーム・南葛SC WINGSの指揮を執るのは尾亦弘友希監督。ジュニアユースのU-13、U-14、U-15の3チームを統括するのは滝口慎也監督だ。現場の最前線でチームと向き合う2人からは、真剣そのものの話が聞けた。

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 現在の南葛SC WINGS(以下WINGS)監督は尾亦弘友希が務める。FC東京などでプレーした後、2016年から当時東京都サッカーリーグ2部だった南葛SCへ移籍。今や南葛SCには元Jリーガーの実績を持つ選手が多く所属するが、その草分け的存在だ。その後、トップチームのコーチを経て2018年にWINGS監督へ就任した。

「今シーズンのWINGSは22名の選手で活動しています。本当にありがたいことに、高校や大学から練習参加の依頼が来ます。現場スタッフといっしょに話し合って入ってもらうかどうかのジャッジはしなければいけませんが、社会人になってもサッカーをしたい女子選手はたくさんいます」

 所属選手は全員20代。大学生もいれば社会人もいる。昨シーズン東京都女子サッカーリーグ1部を制し、関東女子サッカーリーグ2部へ昇格したが、対戦相手は大学チームが多い。それだけ女子のクラブチームの存在が貴重だということを物語っている。

「大学を卒業してもサッカーを続けたいと考えた時に、9月から始まった日本女子プロサッカーリーグ (WEリーグ)やなでしこリーグの1部、2部も選択肢としてあるのかもしれません。ですが、そのレベルまで能力が達していないと評価された選手は地域リーグでのプレーを望みます。WINGSは今、その受け皿になっているのかな、と」

 東京の下町で同じ練習場を継続的に使用できる女子チームはほぼない。その点、WINGSは練習環境に恵まれていると言える。そのありがたさを確かめるように、練習中も1分1秒を惜しんで限られたスペースでもボールを蹴り、ダッシュを繰り返す選手たちの姿が見られた。

「日中は勉強や仕事をしているわけですが、家にいる時も含めてどう休んで何を食べるかといった、サッカーのためのコンディショニングを優先して取り組んでくれています。これがプロなら当然の姿勢かもしれませんが、社会人や学生で当たり前にすることは正直難しい。それでもやってくれることに対して、本当に頭が下がります。こういった姿勢が、コロナ禍で練習時間が短くなったりグラウンドも狭くしか使えなくなったりした時でも、都度対応できることにつながっているのかなと」

 雰囲気は明るい。一方で締める時は締める。尾亦監督いわく「メリハリのきいている」チームにできあがっている。
 

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