【ヒューマンストーリー】カレン・ロバートという生き方

2015年04月25日 サッカーダイジェスト編集部

アジア・ナンバー1を目指す新鋭クラブの初代10番。

安養FCとの開幕戦に出場。ゴールは決められなかったが、前線で精力的にボールを引き出した。写真協力:ソウル・イーランドFC

 かつて磐田などで活躍し、熊本を経てオランダに渡ったカレン・ロバートは、その後タイを経由し、今季からは韓国に新天地を求めた。元Jリーガーは流浪の旅を続けながらも、「いつかイングランドでプレーする」という真っ直ぐな目標を胸に、今日も牙を研いでいる。
 
 今回は、そんなカレンの近況と、秘めた想いをお届けしよう。(※『サッカーダイジェスト』2015.4.23号より転載)

 2015年3月29日、韓国・ソウルでひとりの元Jリーガーが新たなスタートを切った。
 
 ソウル・イーランドFC対安養FC。ソウル・オリンピックの舞台となったチャムシル総合運動場で行なわれたKリーグ・チャレンジ(2部に相当)の開幕戦で、ホームチームの初代10番をつけてピッチに立っていたのは、かつて磐田などで活躍したカレン・ロバートだ。 
 
 今年6月で30歳を迎えるFWは、相変わらずハードワークを厭わない献身的なプレーを披露。ファーストプレスと裏への飛び出しを繰り返し、何度もゴールチャンスに絡んでチーム最多となる5本のシュートを放った。69分にピッチを後にしたものの、積極的なプレーが目立ち、コンディションも悪くない。試合は1-1のドローに終わったものの、上々の滑り出しと言っていい。
 
「今日はちょっと外しすぎたね(苦笑)。俺が1点取っていたら、2-1で勝てたのに」
 
 イーランドFCのエースは名刺代わりの開幕戦ゴールを狙っていたものの、気持ちが入りすぎたのだろうか。シュートシーンで力んでしまい、残念ながら最後までネットは揺らせなかった。しかし、チームメイトが先制ゴールを決めた際、笑顔で駆け寄って右手の親指を立てる"サム・アップ"のジェスチャーを見せるあたり、新しいクラブにすっかり溶け込んでいるように見えた。
 
 カレンがプレーするイーランドFCは、2014年に新設されたばかりの、首都ソウルを本拠地とする新興クラブである。オーナー企業である韓国のアパレルメーカー「イーランド」のビッグマネーを背景に、元韓国代表選手などを補強。レウル・パーク(Leoul Park)と呼ばれる収容人数7万人を誇るスタジアムを借り上げて、サッカー専用スタジアムへと大幅に改修した。今年の5月には、スタジアムから車でおよそ40分の場所に、専用の練習グラウンドが建てられる予定だという。
 
 韓国・Kリーグ1部「クラシックリーグ」の下に位置する「チャレンジリーグ」に参入しているものの、戦力面でもクラブのハード面においても、すでに国内トップクラスだと言われている。
 
「近い将来、アジア・ナンバーワンを目指す」というクラブの公言も、あながち夢物語ではない。
 

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