敵将の愚行で一瞬の隙→3か月前まで2部にいた“新参者”のファーストタッチが劇的決勝弾! ブラジル人記者が見た「南米一決定戦」【現地発】

2021年02月02日 リカルド・セティオン

試合の中身は、はっきりいって凡戦だった

サントスを1-0で下して南米王者に輝いたパルメイラス。(C) Getty Images

 2020年度のコパ・リベルタドーレスは、パルメイラスの優勝で幕を閉じた。

 コロナ禍で試合が中断されるなど、変則開催となった大会を象徴するかのように、この決勝の内容もいつもとは異なるものであった。

 決勝で対戦したのはともにブラジルの名門、パルメイラスとサントス。当然、ブラジル人は特にこの試合に注目をしていた。大物選手も例外ではない。ネイマールとガブリエウ・ジェズスはそれぞれのチームのユース出身だ(前者がサントス、後者はパルメイラス)。彼らは心のクラブの勝利を願い、負けた方が高級レストランでディナーを驕るという賭けをした。

 ネイマールは特にこの勝負に入れ込んでおり、サントスのチームにメッセージを送ったほか、選手全員にも個別に激励のメッセージを送り、自身のSNSにはこう宣言した。

「魚はブタに勝つ!!!」

 余談だが、ブラジルのチームの多くは動物の名前のニックネームを持つ。港町のサントスは魚(Peixao)で、パルメイラスはブタ(porco)だ(パルメイラスは元々イタリア系のチームで、第二次世界大戦の頃、ブラジルはファシストのイタリアのことをブタと呼んでいたため)。

 またセレソンの10番は、試合当日にはTwitterに「今日はディナーをおごってもらうのが決まる日」とも書きこんでいた。

【動画】元Jリーガーのクロスからファーストタッチで豪快ヘッド! パルメイラスが南米王者を決めた一撃
 試合はリベルタドーレス史上最多の世界121か国に中継された。しかし、試合の中身ははっきりいって、凡戦だった。前半はどちらのチームもせめあぐね、後半入ると多少サントスが盛り返してきた。しかし後半アディショナルタイムの8分まで、0-0の状態が続く。

 この日の試合には二人の主役がいた。一人は良い意味で、一人は悪い意味で。この二人の"共同作業"で結着はついた。

 悪い意味での主役は、これまで救世主と思われていたサントスのクカ監督だ。1年間で3人の会長が変わり、資金力がなく、彼自身へも相場の半分の安給料しか出せないチームを、決勝まで導いたのは、間違いなくこの指揮官の手腕のおかげだった。ところがこの試合、彼はひどい過ちを起こした。いや、過ちというより醜態だ。

次ページ指揮官の愚行で約2分間も混乱状態が続き…

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