「五輪延期は日本にとってプラスしかない」なでしこジャパン高倉監督が描く東京五輪への青写真

2020年12月25日 早草紀子

「今年オリンピックをやっても整えていけると思っていたけど」

インタビューに応じてくれた高倉監督。五輪の延期は日本にとってアドバンテージだと語る。写真:早草紀子

 集大成となるはずの東京五輪がコロナ禍で1年延期になった。無観客試合などを経てなでしこリーグはなんとか既定の試合数をこなしたが、代表活動はままならず、予定されていた国際試合もすべてキャンセルになった。それでも、10月、11月と2か月連続で代表候補合宿を行い、ここへ来て新戦力も台頭する嬉しい誤算もあった。この1年の猶予はなでしこジャパンにとっては恵の時となるのか、高倉麻子監督に話を聞いた。

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――オリンピックが1年延期になり、この猶予期間を高倉麻子監督はどう捉えていますか?

「若めの選手が多く、出来上がりつつあるチームであることを考えれば、今年オリンピックをやっても整えていけると思っていましたけど、やはり1年もらったことは、非常に大きなアドバンテージです。若い選手が多いので、成長する時間をもらえました。

 年齢層が高い他国は、フィジカル面でもチーム力においても維持することは非常に難しいでしょうし。延期は残念でしたが、そういう意味では日本にとってプラスしかないと思っています」
 
――国際大会では"したたかさ"が重要だとよくおっしゃっていますが、それは監督が導いていけるものなのか、またどういうアプローチが利くと考えていますか?

「『したたかさ=ズル賢さ』だと思うのですが、年齢が上がったからズルくなるかというとそうではない。結局は試合に対する自覚、責任、勝ちたい気持ちの量とか、駆け引きをできるかどうか。フリーキックを早く始めるとか、身体を当てるとか、相手チームの勢いが出てきた時にちょっと時間使うとか、そういったことを選手たちに話すこともあります。

 ただそれを言うと、そればかりやるんです(笑)。例えば球際で抜かれた時、海外の選手って平気で足を引っ掛けてきたりしますよね。でも日本の選手はすごく正々堂々と戦う。それは大事な姿勢だけど、時には抜かれたら足を引っ掛けてでも止めることも必要だと言うとするじゃないですか。そうすると本当に足を引っ掛けて止めて、『そこでやっちゃダメでしょ』っていう場所でファウルするんですよ。言葉って難しいし、どのタイミングで伝えるかも難しくて、私自身が最後にそこにどう触れるかというのは気を遣いますね」
 

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