「ホンダが中心だったのは明らか。ここでは珍しい…」本田圭佑のデビュー戦をブラジル人記者はどう見たのか?【現地発】

2020年03月17日 リカルド・セティオン

28本出したパスのうち24本を成功

ブラジルでのデビュー戦で初ゴールを決めた本田。(C) REUTERS/AFLO

 デビューまでには紆余曲折があったものの、ついにこの日がやって来た。

 ボタフォゴのサポーターは、本田圭佑のデビューを心待ちにしていた。
「本田はいつプレーするんだ?」最近ではそれがあいさつ代わりだった。

 メディアも待ちわびていた。いったい本田がブラジルでどこまで通用するのか。

 ボタフォゴ幹部もこの日を待っていた。だからこそ懸命の努力で手続きをした。

 もちろん本田自身も、この日が来るのを指折り数えていたことだろう。リオに来てからというもの、カーニバルにも見向きもせずハードな練習をこなしていたのだ。

 そして、かく言う私自身もこの日を楽しみにしていた。日本のサッカーと関わって30年、初めて母国のビッグクラブで日本人選手がプレーするのを目の当たりにできる。

 それにしても……なんという日曜日だったのだろう!

 ブラジルにも少しずつ新型コロナウイルスの脅威が迫ってきている。まだ試合はどうにか行なわれているが、本田のデビューは、無観客となってしまった。本来ならば、熱い声援に包まれてデビューするはずだったのに。「オオォォォォ、ジャポネス チェゴォォォォ!!(おぉ日本人がやって来た!)」と。

 やっとこの時がやって来たというのに、なんという皮肉だろうか。
 
 ただスタンドは空っぽだが、本田の心は熱い気持ちでいっぱいだったように思う。ピッチに向かう"ボタフォゴのサムライ"(リオでは最近そう呼ばれている)の瞳には炎が宿っていた。実際、彼はボールに対してハングリーだった。

 本田はこの日、トップ下でスタメンでプレーした。パウロ・アウトゥオリ監督は、元日本代表MFが入るポジションを作るのは頭痛の種だったようだが、最後にはボランチのルイス・フェルナンデスをベンチに置くことを決めた。そして、本田のスタメン出場のニュースは、無観客で消沈しているブラジル・サッカー界に活気もたらした。

 それにしても、そのパフォーマンスは素晴らしかった。

 ブラジルでは"横"に短いパスを出し、できるだけ時間をかけてゴールに向かっていくのが主流だ。しかし本田は、ここでは珍しい"縦"の動きで攻めた。そして、28本出したパスのうち24本を成功させ、枠内シュートは4本、決定的なスルーパスや卓越したプレービジョンも披露した。

次ページチームメイトは本田が誰よりもボールをキープできることを知っていた

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