南葛SCの歩みを知る“熱きFW”が語る「サッカー人生をここで終えると決めて入団しました」

2019年10月09日 伊藤 亮

「選手個々のレベルが高いことは間違いない」

チームの大きな変化を感じ取っている冨岡。9月には選手だけのミーティングも行なわれたという。写真:滝川敏之

 2015年の東京都リーグ3部時代から南葛SCでプレーしている冨岡大吾。クラブとともに喜びも悔しさも味わってきた男は、自身のサッカーに対する姿勢も変わってきた。「南葛SCは、間違いなく近い将来Jリーグに入るクラブだと思っています」と言い切る根拠とは――。
 
 3回特集の最終回は南葛SCの未来に目を向ける。今シーズン終盤にチームに起きた変化、克服すべき課題。そして冨岡選手本人の気持ち。試行錯誤しながらも、成長を止めようとしない南葛SCの姿が、そこにはあった。(文中敬称略)
 
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 南葛SCで5シーズン目を迎え、これまでにない変化を感じた。
 
「ここ1、2年は変わったことの方が多くて。自分が入団した時から指揮していた向笠実監督から福西崇史監督に代わって、プロ契約の選手が増えた。それだけでなく運営も変わってきました。もう以前のように(他の仕事があるために)練習に行かない、試合に出られないという選手もいなくなりました。上を目指すのであれば当然なのかもしれません。でも、以前にも練習や試合に行かなければいけない気持ちはありつつ、それでも実現できる状態ではありませんでした。それが、今ではたとえメンバー外であっても公式戦に帯同するようになったのは大きな変化だと思います」
 
 その言葉からは、入団時に抱いていたような「楽しくサッカーができればいい」という単純な気持ちだけではない、別の強い気持ちが伝わってくる。この夏は右膝の内側靭帯を負傷し、約2か月間戦列を離れる経験もした。「これだけ長いケガは初めて」という辛い期間だったが、外部から冷静にチームを眺める機会にもなった。
 
「監督も変わりチームも変わるなか、ネガティブなことも多いですけど、真に成長していく上で必要な時期であることもたしかで。もちろん勝たなければいけないのですが、関東リーグなどを見ていても苦しんでいるチームはありますし、成長を志すどのチームにも起こることではあると考えています。選手個々のレベルが高いことは間違いない。あとは自分たちがやりたいことを、コミュニケーションをとりながら細かくすり合わせていけばどこにも負けないチームになるはずです」
 
 9月に入ってからの練習で、選手たちだけのミーティングが行なわれた。今シーズンになって初めてのことだった。
「今シーズン結果が出ていないのと、順位的にも厳しいところにいるということで、今一度選手が思っていることであったり、残りの試合をどう戦っていくかであったりと、意思統一するために選手だけで話しました。僕は副キャプテンとして、技術的なことよりもメンタルのことを話しました。正直、もっと早めにやってもよかったかなと思います。でも、仕事で練習に来られない選手も多いなか、選手が全員集まる日はそうありません。だからこのタイミングになったのですが」
 
 チームの結束を高めるために、選手だけでのミーティングはたしかに有効だ。しかし、選手全員がその必要性を心底求めていないまま行なっても、ただのパフォーマンスに終わってしまう。自発的に集まろうとする空気の高まりを待つしかないのだが、南葛SCの場合、そのタイミングが9月に訪れたということだろう。シーズンのことを考えれば決して早いとは言えない。だが、とても重要かつ価値ある一歩だ。
 

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