南葛SCの歩みを知る“熱きFW”が語る「入団した時はチームがここまで大きくなるという意識はなかったんです」

2019年10月03日 伊藤 亮

Jリーガーへの挑戦、しかし「諦めてしまった」8年前

南葛SCに在籍して5年目となる冨岡。チームの成り立ちをよく知る選手のひとりだ。写真:滝川敏之

 2019年の東京都リーグ1部での戦いは厳しいものとなった南葛SC。しかしチーム在籍5シーズン目のFW冨岡大吾は言う。「南葛SCは、間違いなく近い将来Jリーグに入るクラブだと思っています」と。

 3回シリーズの第2回は冨岡のサッカー人生に焦点を当ててみる。今回知ることができるのは南葛SCの過去。南葛SCとの出会いを知ることで、クラブの黎明期が、そしてクラブと冨岡選手の関係性が自ずと見えてくる。
 
――◆――◆――
 
 じつは、冨岡は8年前に一度、サッカー人生に終止符を打とうとしていた。
「2010年まで所属していた横河武蔵野FCはJリーグを目指すチームではありませんでした。でも、一度上のレベルでやってみたい気持ちが芽生えて。当時同じJFLだったのですが、Jリーグ入りを公言していたAC長野パルセイロにセレクションで合格し、移籍したんです。でも1年やって結果も出ず引退も考えていたんですけど……」
 
 簡単にいうと「諦めてしまった」。多くは語らないが、厳しい経験をしたことが窺える。東京に戻ってきて元同僚や先輩たちに声をかけてもらい、横河武蔵野に復帰する気持ちになった。しかし、上のレベルでプレーしたい気持ちは消えていた。
 
 横河武蔵野に戻った2012年は「今までのサッカー人生で一番充実した年でした」と振り返る。東京都代表として出場した天皇杯1回戦でグルージャ盛岡(当時東北1部)に勝利すると、2回戦では前回大会王者のFC東京(J1)に1-0で大金星。3回戦では古巣のAC長野パルセイロ(当時JFL)にもPK戦で勝利。4回戦では前年度Jリーグチャンピオンの柏レイソルと対戦、0-1で敗れたもののベスト16という堂々たる成績を残した。冨岡はこの全ての試合でスタメン出場している。
 
「周囲もすごく盛り上がって、取材も入りBSで生中継もありました。JFLは11月頃にシーズンが終わるのですが、その後も大事な試合が控えているというのは初めての経験で、いつもと違う状態にみんなふわふわした気持ちになってましたね(笑)」
 
 その翌年も横河武蔵野でプレーしたが、年齢が30に迫ってきていた。
「自分に30歳になってもサッカーをしているイメージはありませんでした。30歳になったらちゃんと仕事をしていければと思い、チームを辞めました」
 
 その後は楽しくサッカーができればいい、という気持ちで当時関東サッカーリーグ1部のクラブに移籍する。しかし試合でほとんど勝てず、フラストレーションを溜め込んだ。自分が描いていた「楽しいサッカー」とはイメージが異なると、1年でチームを去る決意をする。
 
 そして出会ったのが南葛SCだった。
 

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