イングランド「育成改革」の舞台裏。どうサンチョら逸材を育み、ユース代表を強化した?

2019年03月07日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

改革を後押しした「拠点」の存在。

17年のU-17W杯をイングランド代表は、いまをときめくサンチョをはじめフォデン、ハドソン=オドイなどを擁していた。写真:REUTERS/AFLO

「育成大国」として名を馳せているのが、近年のイングランドだ。2010年に「未来のフットボール」と銘打たれたテクニカルガイドを発行すれば、11年に「育成に関する25か条」を発表し、そして12年に「エリート養成プログラム」をスタート。その成果が実る形で、17年にはU-17ワールドカップ、U-19欧州選手権、U-20ワールドカップというユース年代の主要3大会を全制覇した。
 
 当時のメンバーには、大ブレイク中のジェイドン・サンチョ(ドルトムント)をはじめ、ペップ・グアルディオラが惚れ込むフィル・フォデン(マンチェスター・C)、バイエルンなどが引き抜きを画策するカラム・ハドソン=オドイ(チェルシー)、ドミニク・ソランキ(ボーンマス)など逸材がひしめいていた。
 
 その「育成改革」の舞台裏を、FA(イングランド・サッカー協会)が英国中部のスタッフォードシャーに保有する最新鋭のトレーニングセンター『セント・ジョージズ・パーク』で、イングランド・ユース代表のスカウトも担当しているFAのマーティン・ハリソン氏に聞いた。
 
 同氏は1月28日から2月1日にかけて開催された「NIKE NEXT HERO プロジェクト イングランド遠征」(高円宮杯U-18プレミアリーグ2018の選抜メンバーが参加)で日本の高校生たちも指導していた。
 
――イングランドは近年、ユース年代の国際大会で素晴らしい成績を収めています。
 
「FAが育成改革に乗り出したのが、約10年前です。我々FAはユース指導者、教育部、心理学者などと話し合いを重ね、ようやく同じ方向性を見出すことができました。技術や戦術的な部分はもちろん、子供たちとの接し方も変えました。簡単に言えば、指導者ファーストではなく、選手ファーストになったわけです。いま私は指導者をコーチする立場にもあるのですが、そこで口酸っぱく言っているのがコミュニケーションの大切さです。『このコーチングをしているときに、いま子供たちは何をどう考えているか?』を常に念頭に置く必要があります」
 
――育成改革を進めるうえで、何か追い風になったことはありますか?
 
「このセント・ジョージズ・パーク(2012年10月にオープン)ですね。以前は小さなナショナルトレーニングセンターがイングランド各地に点在していて、U-15、U-17、U-19、U-21がそれぞれ別々の場所で活動していました。しかし、今はすべてがここに集約されています。『みんなが集まる場所』ができたことは、本当に大きかった。各年代のコーチと選手間のコミュニケーションと情報共有が、確実に深まりましたからね。FA教育部の本部も置かれているので、ユース年代のコーチ会議が毎週ここで開かれています」
 

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