「2年前といまとではすべてが違う」風間八宏が描き出す“グランパス×DAZN”の新機軸

2019年02月21日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

DAZNとの新たな取り組みが、グランパスのブランド価値を高めるのにひと役買った

昨季は苦しみながらも最終節でJ1残留を果たした名古屋は、同時にDAZNとの共同プロジェクトにも精力的に取り組んでいた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 ひとつのドキュメンタリーが世に出たのは、昨年秋のことだった。
 
 まだJ1リーグのシーズンが真っただ中の11月3日。仕掛けたのは名古屋グランパスとDAZNだ。残留争いの渦中にあったチームが、直接的なライバルである柏レイソルとの大一番に臨む。その試合前後のロッカールームに潜入してカメラを回し、観る者にプロフットボールの奥深さを存分に体感させたのだ。チャレンジ精神に富んだ試みだろう。
 
 エクイップやトレーナー、指揮官、主力選手らの証言を交えながら、試合当日のロッカールームがどう形作られ、どんな指示が飛び、どんな会話が交わされているのかを丹念に掘り下げていく。監督が戦術をこと細かに説明するシーンにグイグイ引き込まれ、戦士の眼に変わっていく選手たちの表情に接し、気づけば、張り詰めた緊張感を共有している。ロッカールーム内に設置された定点カメラと、クラブスタッフのハンディカメラによる映像が、臨場感を大いに引き出した。

『The Locker Room』と題された25分強の作品は大きな反響を呼び、グランパスのブランド価値を高めるのにひと役買っただけでなく、他クラブのサポーターに対しても、クラブとメディアの"新たなカタチ"を提示した。およそ2年間をかけて信頼関係を築いてきた、「グランパス×DAZN」だからこそなし得たプロジェクトだ。
 
 こう言って照れ笑いを浮かべるのは、指揮官の風間八宏だ。
 
「映像を観たひとから、『あんなに大きな声を出しているところ、初めて観ました』『あんな風に言うんですね』とか、感想をもらったんだよね。意外とかではなかったけど、『そうなの?』とは思った。僕に対して、世間一般にああいうイメージはないんだなって。監督なんだけどね」
 
 DAZNやクラブサイドが企画を持ち込んでも、チームを統括する監督がノーと言えばそこまでの話だ。だが、グランパスにはメディアに対して深い理解を持つこの名将がいる。悪くないアイデアだと感じた。
 
「やっぱりひとが見たいと思うものを、できる範囲のなかで見せていければいいと思う。プロである以上、いろんな方々にいろんなものを提供して、グラウンドに足を運んでほしいですから。(DAZNから)話をもらったとき、どうしようかと考えた。もちろん選手の集中の妨げになっては困るんで、いつもと変わらない状態のなかでならいいだろうと。スタッフの誰かが映像として残すのなら、抵抗はない。みんなでどうやっていくべきかを考えましたが、けっこうスムーズに進みましたね。やるからにはたくさんのひとに見てほしい。どんどん露出して興味を持ってほしい。逆に、スタジアムに入れない人たち、来れなかったひとたちにも見てもらえるでしょう。面白い企画だと思いました」

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