ネイマールをトップ下に抜擢! パリSGの「新チームアタック」を徹底分析

2018年11月05日 ロベルト・ロッシ

トップ下はネイマールが持ち味を発揮しやすい。

ネイマールは左ウイングからトップ下にコンバート。パリSGの攻撃の基準点になっている。写真:Getty Images

 今シーズンからパリSGを率いるトーマス・トゥヘル監督は、これまで率いてきたマインツとドルトムントにおいて、ポゼッションによるゲーム支配とゲーゲンプレッシングによる即時奪回を組み合わせ、常に敵陣でボールを支配して戦うアグレッシブなスタイルを打ち出していた。
 
 しかし新天地パリSGにおいては、それとは少し異なるアプローチを選んでいる印象だ。前線にキリアン・エムバペ、エディンソン・カバーニ、ネイマール、アンヘル・ディ・マリアというワールドクラスのタレントを抱えることもあってか、戦術的な秩序よりもまず、ピッチにひとりでも多く質の高い攻撃的プレーヤーを送り出し、彼らの卓越した個人能力をできる限り引き出しつつ、同時に攻守のバランスが確保できるようなチーム全体のあり方を模索しているように見える。
 
 前監督のウナイ・エメリと大きく異なるのは、ネイマールを左ウイングではなくトップ下に起用していること。これは中央のゾーンでより多くのボールに触れ、ゴールに繋がる決定的な仕事を増やしてほしいという狙いからだろう。
 
 トップ下は、攻撃に幅を作り出すために大きく開いたポジションを取ったり、プレーの展開に合わせてオフ・ザ・ボールで裏に飛び出したり、守備の局面で敵SBを追いかけたりというタスクが要求されるウイングと比べれば、攻守両局面で戦術的な制約がより少なく、自由にプレーすることが許されるポジションだ。
 
 中央はサイドよりもスペースが少ないが、ネイマールは足下にボールをもらうことを好むし、そこからの仕掛けでは圧倒的なテクニックとアジリティーを駆使してスペースの狭さをまったく苦にしない。その意味でも天才肌のネイマールにとっては、より持ち味を発揮しやすい場所と言えるだろう。
 
 実際にネイマールは、敵2ライン(DFとMF)間で崩しとフィニッシュに絡むトップ下の典型的なタスクだけにとどまらず、頻繁に中盤に下がって組み立てとポゼッションにも絡むなど、今シーズンのパリSGの攻撃においてひとつの基準点として機能している。1試合平均のパス本数も60弱で、これはFWではなくほとんどMFの数字だ。
 

次ページ組織の中で活かすためエムバペは右サイドに。

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